侍ジャパン山本由伸はドラフト4位指名? ドラマ化迫る『ドラフトキング』で考えたい“プロ野球の熱き舞台裏”
4月8日より放送がスタートする『連続ドラマW-30 ドラフトキング』(WOWOW)。主演のムロツヨシをはじめとするキャストが発表され、ファンの期待が高まっている。
原作は「グランドジャンプ」で連載中の人気野球漫画『ドラフトキング』(クロマツテツロウ)。プロ野球チームの凄腕スカウトマンの郷原眼力(ごうはら・オーラ)と、鳴物入りでプロ野球入りするも、郷原の“予言”どおり大成できずスカウトマンになった新人・神木良輔を軸に、将来有望な選手を見出すスカウトの裏側が描かれている。
本作の見どころは、ドラフト1位のスター選手をめぐる獲得競争ではない。野球ファンにはよく知られているように、ドラフト1位でプロでは活躍できなかった選手も、逆に下位指名でスーパースターになった選手も数多く存在する。原作で「落合博満 ドラ3、イチロー ドラ4、工藤公康 ドラ6」という例が挙げられているが、彼らは間違いなくその年の“ドラフトキング”だ。本作では、誰もが注目するダイヤモンドだけでなく、いかに磨けば光る原石を見出すか、というドラフトの醍醐味が描かれている。
他球団が注目していない選手に熱を上げ、アクロバティックな指名に繋げる郷原の凄さは、素人にはわからない。そこで、疑問をストレートにぶつけ、丁寧に紐解いていく神木の役割が重要になる。郷原が推薦する“平凡”な選手、あるいは切り捨てたスター選手を掘り下げることで、「選手の完成形を予見する」というスカウトの本質が見えてくる。
時には別ポジションへのコンバートも含めて、そのポテンシャル/伸び代を精確に捉えるのは至難の業に思えるが、『ドラフトキング』ではスカウトが見るポイントや、その選手が大成しそうだと判断する根拠が提示されており、説得力がある。もちろん、エンターテインメントとして誇張されている部分は大きいはずだが、野球ファンなら「もしかしたらこの話は……」と思い当たるエピソードもあり、作者の綿密な取材が活きた内容だ。
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の優勝で一躍注目を集めた侍ジャパンのメンバーにも、ドラフト下位指名のスター選手は少なくない。例えば、金メダルを獲得した2021年東京オリンピックでエースを務め、今回のWBCでも先発を任された山本由伸投手は2016年のドラフト会議で、オリックス・バファローズから4巡目指名を受けている。このエピソードが、かなり『ドラフトキング』的だ。
デイリースポーツの記事「【野球】オリックスはなぜ山本由伸をドラフト4位で指名できたのか?」(2020年4月22日)によれば、山本が高校3年生の春、スカウトの間で「足をケガしたから社会人に行くらしい」という噂が流れたという。そこで各球団が手を引くなかで、担当スカウトの山口和男氏は自分の目を信じ、「ケガは大したことがない、絶対に指名するべき素材だ」と球団に訴えたという。選手を信じるスカウトの目がなければ、NPB史上初の2年連続投手5冠を達成した日本のエースは生まれなかったかもしれないのだ。
考えれば当然のことだが、すべてのプロ野球選手、もっと言えば高校球児や大学・社会人選手にもドラマがあるーーそんなことを感じさせてくれる『ドラフトキング』。ドラマ第1話は4月1日、WOWOW公式YouTubeチャンネルで無料公開されるとのこと、チェックしてみてはいかがだろう。