【漫画】非モテ高校生とヤンキーが「アユ」つながりで仲良しに 平成の青春を描いたSNS漫画が話題

――なぜ浜崎あゆみをモチーフに?

たけうちしおり(以下、たけうち):幼稚園時代にアユの好きなママ友の家に母たちがよく集まっていたので、アユを聞きながら遊んだり踊ったりしていたんです。それが私にとってはキラキラした思い出なんですよ。それを緊急事態宣言の真っ只中、鬱屈とした世の中だった時期に思い出したんです。そのときめきを漫画にしてみようと思って作ったのが本作でした。

――登場キャラ・新美のファッションや部屋のイメージもそこからですか。

たけうち:もともとギャルやヤンキーのファッションが好きでした。自分の理想も含めて、当時の雰囲気に憧れがあるんです。自分の周りにTHEギャルやヤンキーはいませんでしたが、新美君みたいな「うるせぇ行くぞ!」みたいな「好き」を貫くようなキャラを描くのは楽しいです。

――ふたりの青年を中心に描こうと思った理由はなぜでしょう。

たけうち:先ほどの憧れと、アユの思い出が合致して「ヤンキーに引っ張られて元気になるような漫画にしよう」というアイデアが浮かびました。さらに「引っ張られる人」はギャルやヤンキーと接点がない真逆な人物で、彼と一緒に自分や読者の方が新美君から元気をもらえたらいいなと。

――主人公・阿部はご自身を投影しているところがあったり?

たけうち:いいえ(笑)。自分と一緒の部分とそうでない部分はどんなキャラクターにもあると思いますが、阿部君は新美くんと一緒にいたら可愛いなと感じるイメージで仕上げていきました。彼の行動力を私も見習いたいです。

――ラストシーンで浜崎あゆみ「Boys & Girls」が引用されるのも気になりました。

たけうち:コロナ禍前にフェス「a-nation」で、アユを聴いて感動してから「Boys & Girls」の<輝きだした>というフレーズがずっと頭で鳴っていたんです。あと、一貫して出てくる<僕>という一人称、アユの楽曲には一瞬の<きらめき>を歌っている曲も多くて、彼らの一瞬の青春時代のお話を締めくくるにはピッタリのワードだと思い、あの最後になりました。今は平成のカルチャー自体がリバイバルしていますが、それを意識したというよりも自分の記憶から引き出された感覚です。

――また、たけうちさんは武蔵野美術大学・大学院造形研究科を卒業されていたとか。

たけうち:版画を専攻して、特に木版を研究してきました。江戸時代の出版物の大半は木版でしたから、出版という意味では漫画と近いものがあるかなと。修了制作のインスタレーションでは漫画を彫って刷って、装丁まで仲間に手伝ってもらいながら表現しました。

 どんな分野にもエンタテインメントとアートのバランスがあると思いますが、その配分は個人的に版画と漫画で違います。でも版画から漫画に向かう過程は私にとって自然な成り行きでした。読んでいる間は辛いことや暗いことを忘れられるような、楽しい漫画を描ける作家になりたいですね。

たけうちしおり・最新読み切り『いろは手帖』
https://comic-days.com/episode/316190247026495539

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