【漫画】愛は身分を乗り越えるのかーーSNS漫画『小国の姫と異国の護衛』が“商業誌レベル”の美しさ

好きな要素を盛り込んだ架空の国で

――『小国の姫と異国の護衛』(君が大人になる日)制作の経緯を教えてください。

やとり:「着飾った女の子を描きたい」というのが最初でした。そこから、民族衣装、主従、成長する男女、両片思いなど、私が好きな要素を盛り付けていきました。また、「想いが通じ合うかどうか」というやきもきする段階が好きなので、「そのタイミングにいる男女を描きたい」という思いもありました。

――登場人物はどのように作り上げましたか?

やとり:先ほど言ったような、自分が一番描きたかったシーンのラフ画を描き、姫の幼少期・普段の姿への想像を膨らませました。シュカについては姫と並んだ時にいい感じになるようにしつつ、自分の好きな髪型や雰囲気を取り入れて作りました。特にモデルはいませんが、シュカという名前は異国っぽい響きが好きで、知人から拝借しています。

――舞台設定は何をイメージしましたか?

やとり:舞台設定はふんわりとしています(笑)。技術や文化の発展具合などは中世ヨーロッパくらいをイメージしました。衣装は色々な地域の好きな要素をごった煮にしているので、どこでもない、どこか架空の異国ということにしています。

登場人物がその瞬間にどんな思いを抱いているか

――窓や絨毯など背景が細かく丁寧に描かれていましたね。

やとり:背景のベースとなる部屋はクリップスタジオの3D素材を使用しており、その上からまた別の素材やブラシを掛け合わせて装飾を作りました。素材をふんだんに使用していますが、自然に見えるように光と影の入り方などを工夫して描いています。ブルーモスクやヴェルサイユ宮殿など、内部に細やかな装飾がなされている建物がとても好きで、そういったものに少しでも近づけたかったという思いがあります。

――登場人物の表情も印象的でした。

やとり:「登場人物がその瞬間にどんな思いを抱いているか」「その結果、どの感情を表に出して、逆にどの感情を隠そうとしているのか」ということは常に意識しています。イラストを描く際、最も力を入れているのが目なので、目元はいっそう大切に、気持ちを乗せて描きました。漫画で描写される、宝石のような宇宙のような大きな目が好きで、それを表現できるように意識しましたね。

――姫とシュカは結ばれない運命を辿りそうですが、2人の未来についてはどのように考えながら描きましたか?

やとり:制作中は、結ばれる未来と結ばれない未来の両方のストーリーを考えながら、「どちらも想像して切なくなってもらえたらいいな」という気持ちで描きました。Twitterでも「報われないのだろう」という一方で「結ばれてほしい」などの反応をいただいており、「良かったな」と思っています。まだ2人の行く末はわかりませんが、小さいながらも一国の姫君と、売られていたような身分の異人種の男が結ばれるというのは相当なハードルが高いです。作中でもあったように縁談の話も程なくして来るでしょうから、前途多難な未来であるのは間違いなさそうです。

――今後は漫画制作を展開していく予定ですか?

やとり:今回漫画を描いて、予想外にたくさんの反応をいただけたので、今後の漫画制作のモチベーションになっています。イラストと並行して漫画も描いており、いつかは本にまとめたいです。Twitterやpixivなども今後更新していく予定なので、見ていただけると嬉しいです。

やとりさん

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