『HUNTER×HUNTER』連載再開で「ジャンプ」に勢い お祭り騒ぎの中心で、冨樫義博は淡々と描き続ける
2018年11月から休載していた「週刊少年ジャンプ」の人気作『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)が10月24日、「週刊少年ジャンプ」47号で連載を再開した。
漫画ファンはお祭り騒ぎで、日付が変わった直後から大盛り上がりだが、その興奮を共有しているのは、「週刊少年ジャンプ」掲載作家陣も同様のようだ。巻末コメントを見ると、アニメ化も期待される人気作『SAKAMOTO DAYS』の作者・鈴木祐斗氏は、「H×Hの系統診断したら具現化系でした!でも周りからは放出系と言われます!」という、お茶目なコメントで連載再開を祝っている。
勢いのあるラブコメ『大東京鬼嫁伝』の仲間只一氏は『H×H』の好きなシーンとして「ノブナガが車道で抜刀するシーン」を挙げると、“元雪だるま”の主人公と魔術師のドタバタコメディ『ギンカとリューナ』の渡辺シンペイ氏、12月からのアニメ化が決定している『僕とロボコ』の宮崎周平氏は、「感無量」という言葉を使って、同じ誌面に載ることに対する喜びのコメントを寄せた。
既報の記事「『HUNTER×HUNTER』再開でジャンプはさらに面白くなる? 漫画編集者が語る、冨樫義博“週刊連載復帰”の意味」において、漫画編集者で『コロナと漫画~7人の漫画家が語るパンデミックと創作』などの著作で漫画評論を展開する島田一志氏は、「ジャンプ」の歴史を踏まえた上で、その一部である『H×H』の連載が再開されることで、「世代は違っても作家同士、お互いに意識しないはずがなく、雑誌全体が活性化するのではないか」と語ったが、若手作家たちの歓迎とともに、その幕が上がった印象がある。
最新号のためネタバレは控えるが、巻頭カラーの落語漫画『あかね噺』は、冒頭からカタルシスのある痛快なエピソードを描き、『H×H』の休載中もジャンプの看板を守り続けてきた『ONE PIECE』は、“最終章”らしい豪華なバトルを展開。日本の中世史に関心が集まるなか、着実に人気を高めてきた『逃げ上手の若君』では「女影原の戦い」が印象的な結末を迎え、そこに『H×H』のロジカルで残酷なバトルが加わると、前半を読むだけでも『呪術廻戦』、『ブラッククローバー』、『ルリドラゴン』という人気3作が休載しているとは思えない充実感がある。
当の冨樫義博氏は、24日14時現在まで、淡々と仕事の進捗を伝えるツイートをしているのみで、連載再開についてのメッセージは特に発信していない。そして巻末コメントには、「作品名に関するジンクスで、『お互い入ってるね』と談笑した思い出。安らかに」と、沖縄県名護市で7月、人命救助中に亡くなった『遊☆戯☆王』作者・高橋和希さんに対する弔いの言葉を刻んでいる。
連載再開で普段よりどれだけジャンプが売れたか、ファンとしては気になるところだが、冨樫氏はどこ吹く風と、いまも『H×H』のひりつくバトル/心理戦を描いていると思われる。台風の目は静かだというが、いずれにしてもしばらくは、『H×H』を中心に週刊少年ジャンプ全体がより活気を帯びていきそうだ。