【漫画】親ガチャを回せる世界、不遇な少年の決断とは? 奇妙な世界で紡がれる男女の物語に胸が締め付けられる

ーー近年ではよく耳にする言葉から思いがけない物語に発展する、色々な意味で衝撃的な作品でした。本作を創作したきっかけを教えてください。

七海:元々は賞に投稿する漫画を、「姥捨山(うばすてやま)」をテーマに描こうと思っていたんです。人間が物のように管理されている設定の画が描きたくて。でもそれが中々うまくいかなくて、「親を捨てる」というテーマをもう少しキャッチーにしようと思って生まれたのが、『親ガチャ』でした。

 それで賞の結果も出たときに、ふとTwitterの漫画家志望界隈を思い出したんです。昔いたんですけどまた戻りたいなと思って、軽い気持ちでアカウントを作って漫画を載せました。それが思っていた以上の反響をいただいて、びっくりしています。

ーー大きな反響の中で、印象に残っているコメントはありますか?

七海:Twitterのリプ欄で、「親ガチャ」の反対になる言葉として「子ガチャ」が出ていて。この「子ガチャ」という言葉に対して私のツイートのリプ欄で喧嘩が始まったときは、びっくりしましたね。「うわー喧嘩してるなー」と傍観していました。

 ただ今回の漫画が広まったのは、漫画の内容よりも「親ガチャ」の言葉が持つ強さや話題性が大きいと思います。この「子ガチャ論争」を見ていても、それを感じました。

ーー幸福感と不幸感が交錯するラストが非常に印象的でしたが、ラストシーンは最初から決められていたものですか?

七海:そうですね。どのようなラストがいいかなと悩みはしたんですけど、最終的には編集さんと話して決めました。設定を思いついたときに、本当に「親ガチャ」があったらどうなるかなと考えたんです。よく性格とかも親の遺伝子が影響するって言うじゃないですか。だからもし本当に「親ガチャ」をしたら、その当人は自分じゃなくなるのではと思いました。

 皆「親ガチャしたい」って言うけど、本当にしたらその感情すらもなくなってしまうと思って。その疑問を読者に投げかけたかったので、後半の展開やラストシーンはこのような形にしました。

ーー七海さんが漫画を描き始めたきっかけは?

七海:実は私は元々漫画家になりたかったわけではないんです。どちらかと言うと、描きたい話が先に思いつくんですよね。そしてアニメ会社やゲーム会社に就職して監督やシナリオライターになるよりも、1人で漫画家になる方が早くたくさん描けるなと思ったのがきっかけでした。

 今は18歳で、漫画家になろうと思い始めたのは、14歳か15歳です。元々少し画は描いていて、習っていた時期もあるので人に見ていただけるレベルの画が描けたのも大きかったですね。もちろん今は片手間にやっているわけではなく、真剣に活動させていただいています。

ーー今後はどのような漫画を描きたいですか?

七海:今後はアクション漫画とかも描いてみたいです。ただどうしても考える方向が鬱系のストーリーになってしまうので、王道バトル作品ではなくダークファンタジーになると思います。『ぼくらの』とか『なるたる』を描いている鬼頭莫宏先生がすごい好きで、そういったポジションの作家になりたいですね。とにかく今後はしばらく読切を描いていけたらなと思っているので、機会があれば読んでいただけると嬉しいです。

関連記事