【クイズ】セミは死ぬ前にどんな景色を見る? 『生き物の死にざま』が教えてくれる、命のはかなさ

Q1:セミは死ぬ前にどんな景色を見る?

Q2:昆虫は子育てする?

Q3:老けない生き物はいる?

 そんな疑問に答える本がある。稲垣栄洋著の『生き物の死にざま』(草思社文庫)だ。

 動物好きな筆者なら絶対に好きになるだろう、と友人に勧められて手に取り、読み始めた瞬間から心を奪われた。それ以降、どこにいくにも持ち歩き、ときには電車の中で年甲斐もなく目頭を熱くした。

(※冒頭のクイズの答えは3ページ目にて!)

何のために生きるのか

 『生き物の死にざま』と姉妹本にあたる『生き物の死にざま はかない命の物語』(共に稲垣栄洋著・草思社文庫)に綴られているのは、さまざまな生き物たちの死だ。命が燃え尽きるその瞬間の、まるで線香花火が落ちる瞬間の力強く輝く様子を切り取ったような死の描写なのだ。

 生き物の生きる目的は子孫繁栄であり、その目的を果たすために命をかける。ときに、子孫のために自らの命を投げ出す。餌が取れにくいなら、パートナーが餌となってメスをサポートする。生まれてきたばかりの子供たちが食べ物を探せないなら、母親が命を差し出す。

 その様子は、献身的という言葉では済まされない。そんな壮絶なドラマが、私たちの身近な場所で起こっているのだ。

男性の目線で生き物のオスを語る

 同作を書いている生垣栄洋は、静岡大学大学院農学研究科教授で農学博士だ。

 同氏は農学博士の視点で動物の死を見つめ、ときに、男性として生き物のオスに強く共感し、己の性を嘆く。チョウチンアンコウのオスの生きざまではこのように書いている。

メスのひもとして、道具としてだけ生きたチョウチンアンコウのオスにとって、「生きる」とは、一体どのような意味を持つのだろうか。男としての生き方としては、ずいぶんと情けないと思うかもしれない。しかし、そうではないのだ。(『生き物の死にざま』メスに寄生し、放精後はメスに吸収されるオス チョウチンアンコウ より一部抜粋)

 オスの話をしていたはずが、急に「男」の話にすり替わる。オスの役割が「精子のみ」と強調されると、生垣の文章は、とたんに拳を握りしめるかのような悔しさを滲ませながら「男は……」と語る。冷静さを維持しようとも、感情が溢れてしまうのだろう。

 生物を研究すると、男女の役割を強く意識せざるをえなくなるのはわかる。だが、多くの動物に関する書籍は、それを感じさせないようにニュートラルな姿勢をとっている。

 一方で、『生き物の死にざま』は、著者の「男はそれでも必死に生きている」という生物の垣根を超えた同性に対する憐憫と肯定がヒシヒシと伝わってくるのだ。

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