キノコシーズン到来! 見ているだけでも楽しい、おすすめキノコと図鑑3選
いよいよ9月、まだまだ暑い日が続いているが、秋の気配を徐々に感じるようになってきた。秋の名物といえば、キノコである。この季節に地方の道の駅に行けば天然のキノコがずらりと並んでいるし、キノコ料理をウリにする温泉旅館も多い。
さて、キノコは食べるのも楽しみなのだが、その姿かたちのユニークさにも注目してみたい。赤、黄、中には空色の傘をもつソライロタケや、緑色のワカクサタケという種類があったりして、実にカラフルでかわいらしい。また、キノコに生えるキノコ(ヤグラタケ)があったり、森の中に輪を描いて生える(菌輪、もしくはフェアリーリングなどともいう)といった生態の面白さも人を引き付けてやまないのである。
そんなキノコの世界に触れてみたいと思ったら、キノコ図鑑を手に取りたい。美しい写真を見るだけでも楽しいし、自然が作り出す造形に癒されるという人も多いのである。おすすめの3冊を紹介しておこう。
小学館の図鑑NEO きのこ DVDつき[改訂版]
筆者がもっともおすすめする一冊である。児童向けの図鑑だからと言って侮ってはいけない。児童向けであるがゆえにもっとも解説がわかりやすく、大人の利用にも十分に耐えられる。そして、キノコの収録数が約700種類と非常に多く、これは現在売られているキノコ図鑑の中でもトップクラスだ。それでいて安い。そして、最新の研究成果が反映されているのがいい。『ドラえもん』のDVDがついているので親子で楽しめるし、初心者にもキノコの面白さがよくわかる。まさにいいとこどりで、完全無欠なキノコ図鑑なのだ。
増補改訂新版 日本のきのこ (山溪カラー名鑑)
キノコ愛好家のバイブルであり、歴史的な名著と言っていい一冊。この図鑑を手にしてキノコ好きになったという人も多く、まさに“沼の入り口”にふさわしい本だ。今関六也、本郷次雄といった今は亡き研究者の解説が読めるのがポイントだが、なんといってもキノコの生態を見事に写し出している伊沢正名の写真が一番の魅力だろう。2011年に増補改訂版が発行されたものの、様々な事情があったのか、若干使いにくいものになってしまっている(このへんの話を書くと長くなるので止めておきたい)。それでも本著はキノコ写真集としても十分に楽しめるし、後半にはキノコ料理の楽しみ方など実用的な記事が多数載っている。値段は高価であるが、キノコに興味を持ったら手にして損はない一冊だ。
新版 oso的キノコ擬人化図鑑
最後に、異色の存在だが本格派の図鑑を紹介しておこう。キノコの擬人化イラストで知られるosoによるキノコ図鑑兼イラスト集である。約100種の収録数は少なめで種類も若干偏っているのだが、イラストを眺めているだけでも楽しいのだ。osoは実際にキノコを採集し、観察したうえでイラストを描いているので、キノコ好きならイラストを見ただけで「この女の子はベニテングタケの擬人化だ!」とわかるはず。特に、カメムシタケ、ツバキキンカクチャワンタケ、バライロウラベニイロガワリなど、おそらく一般にはほとんど知られていないキノコの擬人化に挑戦しているのはosoならではだろう。キノコ愛が結実した一冊といえる。
上記の3冊は、キノコの面白さに触れられるのはもちろん、見て楽しい本ばかりだ。本格的にキノコに関心を持ってからも愛用できる点からも、おすすめできる。
なお、キノコ図鑑は可能な限り最新のものを使うのがおすすめだ。家に20~30年前に買った図鑑がある、という人は使うのを避けるのが賢明である。2000年以降、もとは食用と言われていたが毒性が疑われるようになったスギヒラタケや、死亡事故が起こって猛毒キノコと判明したカエンタケなどの例があるためだ。
特にカエンタケは、今でこそニュースを騒がせるキノコなのだが、以前は毒性がはっきりわかっていなかったうえに発生が比較的稀なキノコだった(現在は普通に見つかるようになった)こともあって、1990年代までに刊行された図鑑には載っていないことも多いので注意したい。
最近は、タレントの辻希美の息子がキノコ好きを公言し、YouTubeでキノコ狩りに出かける動画を配信するなど、キノコ好きの裾野が広がりつつあるようだ。ただし、キノコの見分け方は非常に難しく、毒キノコも多いため、初心者がむやみに採集するのは危険だ。できれば、知識と経験が豊富な人と一緒に採集するのが望ましい。
それでもキノコ狩りは自然と触れ合う機会になるし、コロナ騒動のテレワークで運動不足になった身体を動かすこともできるなど、魅力がいっぱいだ。秋になると各地で観察会が行われているので、参加してみるのもいいだろう。