女の園の星、スポットライト、A子さんの恋人……ユニークな背景画に注目したい漫画3選

 『マツコの知らない世界』(TBS系)の8月23日の放送回にて、「マンガ背景の世界」と題し背景の作画が秀逸な作品として『ゲゲゲの鬼太郎』や『タッチ』などが紹介された。

 写真加工やCGを用いて背景画像を作成することが容易になってきたなか、キャラクターだけでなく背景に工夫を凝らした作品は多い。本稿ではその一部を紹介したい。

『女の園の星』

 数々の漫画賞を獲得し、コミックス第3巻の特装版としてアニメ化されることが発表された『女の園の星』。女子高を舞台に在学する女子生徒や先生たちの少し可笑しな日常を描いた本作は多くの読者を虜にしている。

 幸運を呼ぶアイテムとして噂となりマジ感謝された「クワガタボーイステッカー」や、ラー油とゴマ油の効いたうどんが入った中華まん「うどんまん」など、強烈なユーモアを感じるエピソードの数々。ただ女子生徒の話す言葉や先生たちの絶妙なテンションなどからは、まるで現実に存在しているかのようなリアルさも覚えてしまう。

 そんな本作のリアルさを生み出している要素として緻密な背景描写の存在も挙げられるだろう。その一例として作中で多く登場する職員室は、机に積み上げられた資料や、ファイル同士で支え合いながら直立を維持している様子など、多くの資料が存在する雑多な職員室独特の空気感が表現されていると感じる。

 忠実に描かれた職員室であるが、星先生の背後にある席に置かれた(サボテンのような)観葉植物や、小林先生の机に置かれた棚の上に置かれた象のフィギュアなど、特定のオブジェクトは毎回決まって定位置に存在している。描写だけでなく設定も含め背景におけるデティールの緻密さも本作の魅力といえるだろう。

『スポットライト』

 背景の描きこみやデティールの緻密さといった情報量の多い背景描写は多くの人に感動を与えるものであろう。ただ『スポットライト』で描かれる背景は光と影が巧みに表現されている。

 本作は漫画賞「アフタヌーン四季賞2019春」で四季大賞に選ばれた三浦風氏が『アフタヌーン』(講談社)にて連載した作品だ。大学生・斎藤恭平は恋心を寄せる同級生・小川あやめを影から盗撮していた。あやめが“陽の者”とされる学生が多く参加する大学のミスコンにエントリーすることとなり、斎藤もひょんなことからカメラマンとしてミスコンに参加することとなってしまう。

 カメラというモチーフ、そして「コミュ強」や「モブ」といったワードと共に集団のなかで個人が放つ存在感・輝きが描かれる本作では、背景描写でもベタやトーンによる加工を多く用いることで光と影が表現される。例として「第1話 この人が女神」では斎藤がカメラマンとしてキラキラライフ(斎藤談)を送るクラスメイトの花見に参加するのだが、夜の公園で光る街灯や花火に照らされた大学生を、斎藤は影となる場所から撮影する。

 コントラストがつよく表れた背景の現実味もさることながら、光と影を巧みに表現する本作の背景は登場人物の境遇や心情を視覚的に表現するために作用しているのだ。本作で描かれる、光と影のコントラストがハッキリと浮かび上がる大学生活は痛いほどにリアルである。

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