【高校野球 】清原和博、松坂大輔、吉田輝星から無名の戦士まで……あの夏を追体験する書籍5選

平熱より高めの体温すら上回る熱波(ロウリュ)を全身に受けアスファルトに立つ。手をついたポストの熱さに静かな街を軽くザワつかせる悲鳴を上げるほどの39度のとろけそうな日。何の因果か出張で名古屋に向かう。よりによってこの暑い日にと誰かを恨むより往復の時間を有意義に昇華させるためにと用意した5冊の本。

 暑い夏の象徴ともいえる高校野球をテーマにした本がギシギシと肩に食い込む。ギシギシギシギシ。その不協和音とすっかり茹で上がったトウキビ頭で彼らの夏の記憶を追体験する。

鈴木忠平「虚空の人」文藝春秋

 甲子園のヒーローから稀代のホームランバッターとして記憶に残るプロ野球選手だった清原和博が覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されてから4年。逮捕後に初めて清原との接点を持った著者がどん底まで堕ちた英雄の心に空いた穴を巡る旅。

 ただひたすらに暗く深い闇に沈み込んだ英雄は薬物を絶つために飲んだ薬で鬱々と沈み込む。彼を支える人々と彼にすがる人。その有象無象ばかりか本人ですら作り上げられた「清原和博」という虚像を追い求める。歯車が狂ったのはいつだったのか。

 今も英雄は自問自答する。高校3年夏の甲子園決勝で放ったホームランが燦然と輝いているからこそ、現在の闇は深い。怪物と称された英雄。本当の怪物は誰なのか。清原和博の物語はまだ終わらない。

ベースボール・マガジン社・編「僕たちの高校野球」ベースボール・マガジン社

 高校野球の3年間順風満帆だった選手はいないだろう。それでもプロ野球選手=エリートとみてしまうのも無理のないこと。彼ら現役プロ野球選手9人に語ってもらう「あの頃」
柳田悠岐、吉田輝星、高橋光成、山本由伸、坂本勇人、浅村栄斗、山崎康晃、村上宗隆、大野雄大、キラ星の如く輝く彼らにもあった苦悩と挫折。彼らを指導し、導いてきた監督からの言葉が沁みる。

中村計「金足農業、燃ゆ」文藝春秋

 公立、田舎、純朴、農業高校、9人。
 そんな連想ゲームで勝手なカテゴライズをしていた2018夏の甲子園準優勝チーム金足農業のリアル。プロローグで躊躇してはいけない。これは「現代の高校生」が起こした奇跡のドキュメンタリーなのだから。ありのまま綴られる素のままの彼らの成長の軌跡苦い思いでページを捲るうちに自らの「あの頃」を思い出す。

 ハンカチ王子と比べられる程の爪痕を甲子園に残した「王様」吉田輝星のこれからと、彼を孤立させなかったチームメイトのこれからを追い続けたい。

 そして今年の楽天主催試合・秋田こまちスタジアムでの楽天VS日ハム戦に登板した吉田輝星を球場全体が押し上げた「おらが町のエース」感。そこは楽天さんも忖度しましょうよ……

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