【漫画】ぽんこつなクラスメイトとの“共謀”は意外な結末にーー『放課後の隣人』が面白い

ーー夏休みがはじまるワクワク感、そして親しい人が去る喪失感を覚えた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

田島青:当時投稿をしていた雑誌の、新人賞の読み切りを作ろうとしたことがきっかけです。言葉に対する苦手意識と、コミュニケーションの理想を物語にしてみようと思ってプロットを作り始めました。

 最初に作ったプロットは真夜中の廃校が舞台の幽霊と猫の話だったのですがうまくいかず、自分が学校の課題で特に苦手だった「作文」をモチーフにすることを思いつき、この話になりました。

ーー終盤に教室で晶さんがひとり過ごす場面から入道雲が立ち昇るほどの蒸し暑さや、ふな漕ぎをした椅子がきしむ音のなつかしさ、扇風機やカーテンの揺れから感じる夏の風の心地よさを感じました。

田島青:最後に教室で一人椅子を揺らしながら窓の外を見つめる晶のページは、夏の空気を出すことができたかなと個人的に印象に残っています。細かいところですが、シャーペンのプラスチックの透明感を描けたことがすごくうれしかったです。

 あと、1ページ目から描き始めたのですがなかなか納得がいかず、何度も描き直して完成させた記憶があります。

ーー本作を描くなかで意識したことは?

田島青:プロットを作っている段階では、国語と数学、人工的な扇風機の風と自然の風など、対比関係を意識しました。分かり合えなくても共に過ごす時間自体に、正誤を越えた価値があるのではないかという考えを形にできればと思いながら描いていました。

 分かり合えない他者のある種の分かりやすい形として、由多加をロボットにしました。

ーー由多加くんが晶さんに発した「晶が人間でよかった」という言葉が印象に残っております。

田島青:ここは「入ることのできないプール(=「由多加は人間ではない」という事実)」という晶のモノローグとの対比として出てきた言葉なのですが、正直、この台詞だけは私自身もあまり言語化ができていません……。

 正しい答えを求める人間の晶と、正しい答えが出せないロボットの由多加は全然違うようでいて、ある意味で似ていて、でも決定的に違うということの、その肯定がしたかったのかなと思います。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えていただきたいです。

田島青:物語を作りたくて学生時代は映画に携わろうと考えていたのですが、漫画なら一人(実際は一人ではありませんが…)で全てが紙の上で作れることに気付いて、漫画を描き始めました。

ーー今後の活動について教えてください。

田島青:現在は漫画配信サイト「サンデーうぇぶり」にて連載中の『ホテル・インヒューマンズ』で、様々な人の物語を描けたらと思っているので、『放課後の隣人』を読んで下さった方にも、ぜひ読んでみていただきたいです。

 あと、いつか歴史の物語を描いてみたいです。

■作品情報
『放課後の隣人』

『ホテル・インヒューマンズ』
https://www.sunday-webry.com/episode/3269754496551508368

 

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