80年代少年漫画のヒロインは、なぜ今も輝き続けるのか

固定観念を打ち破る異色のヒロイン

 一方で、ユリアと対照的な性質を持つヒロインもいる。冷徹でわがまま、自分の望むものを手に入れるためなら人を騙すこともいとわないセクシーな美女……と書くと悪役のように聞こえてしまうが、その筆頭が、『GS美神 極楽大作戦!!』の主人公であり、メインヒロインの美神令子だ。

 美神は金を何よりも愛している。金のためなら、美神の魅力に惹かれてアシスタントになった横島忠夫を平然と振り回すのだが、そんな横島を見てなぜか「うらやましい」と感じた読者も多いのではないだろうか。魅力的な異性に振り回されたい願望を満たしつつ、同性からは「かっこいい」と思われるのが美神なのだ。

 また美神は高い戦闘力で、「可愛い」だけが少年漫画誌のヒロインではないのだと示している。彼女はときおり、人のピンチを救うスーパーヒーローのような輝きを見せており、ラムのような一途さ、ユリアのような限りない優しさはないが、紛れもなく、80年代を代表する少年漫画のヒロインだと言える。

懐かしヒロインは現代の読者にも大人気

 昭和から平成を経て、令和4年、新作アニメ『うる星やつら』の放送決定のニュースが世間を騒がせた。原作漫画の連載は1978年から1987年までだったが、今もなお熱烈なファンを獲得していて、その多くがヒロインのラムに魅せられている。

 私の友人は「ユリアのような女性になりたい」とよく言っていた。『北斗の拳』でユリアが登場した時、私たちはまだ生まれていなかったが、後世まで男女問わず多くの人を惹きつけているのがユリアだった。

 そして子どものころからアニメの再放送で『GS美神 極楽大作戦!!』を見るたび、美神が悪役のようなことをしても「美神令子だからしかたない」と感じる自分がいた。大人になった今、それを言語化するなら、美神は、大人だけではなく子どもにもそう思わせてしまう魅力を備えているのだ。

 90年代以降の漫画を読んでいると、彼女たちの影響を色濃く受けたのではないかと思えるヒロインがたくさんいる。ラム、ユリア、美神令子……。彼女たちが後の少年漫画に影響を与えたことはたしかだろう。

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