時を経て再認識した、山岸凉子のホラー漫画が持つ“別次元の恐怖” 「汐の声」「天人唐草」が本当に怖い

被害者から加害者になる怖さ

 「汐の声」も「天人唐草」も、約40年前の作品であり、常に筆者と共にあった。若い頃は主人公に共感し、大人から求められるイメージに悩み、ときに被害者意識を持った。

 しかし、年を重ねて親という立場になった今、物語の大人側、つまり加害する人物に自分を重ねるようになった。今となっては、いかに加害側の人間になるのが簡単かがわかる。しかも、彼らが特別に性格がひねくれているわけでも、特異な環境に身を置いているわけでもないことも理解できる。どこにでもいる普通の人で、要所で間違った発言をして子どもを追い詰めただけだ。

 つまり、筆者も彼らと同じ轍を踏み、大切な人を傷つけて追い詰める可能性はいくらでもある。そう考えると、怨念のこもった市松人形に襲われるほうがマシと思ってしまうのだ。

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