鬼滅、呪術、東リベに続く“覇権アニメ”に? 『SPY×FAMILY』大ヒットを予感させる3つの理由

 2014年9月22日からサービスが開始されたマンガ雑誌アプリ『少年ジャンプ+』の連載作品において、はじめて単行本の累計発行部数が1000万部を突破した『SPY×FAMILY』。

 「このマンガがすごい!2020(オトコ編)」で1位を獲得するなど、連載開始から高い評価と多くの読者を獲得してきた本作。2022年4月9日からテレビ東京系でアニメ版の放送も予定されており、より大きな注目を集めることが予想される。

 ここ数年で爆発的な人気を獲得したマンガ/アニメ作品として『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、『東京リベンジャーズ』が挙げられるが、『SPY×FAMILY』もこれらの作品と並ぶほどの人気を獲得する作品となるのか、本稿で考察したい。

張り詰めた空気が漂うホームドラマ

 西国で最も腕の立つスパイ「コードネーム:黄昏(たそがれ)」に課せられたミッションは東国の要人「ドノバン・デズモンド」の不穏な動きを探ること。ただ、デズモンドに近づくには彼の息子が通う名門校に潜入捜査をする必要があり、そのためにも自身の子ども、そして妻をつくることが求められる。

 精神科医「ロイド・フォージャー」と偽り家族の一員を探すなか、ロイドが出会ったのは心を読むことができる少女「アーニャ」。そして「いばら姫」の名で殺し屋を務める女性「ヨル」。お互いの素顔を隠しながら3人は仮初めの家族「フォージャー家」として日々を過ごしはじめる。

 スパイと殺し屋、超能力者が織りなす混沌としたホームドラマには、互いに素性を知られてはいけないという条件も加わる。円満な家庭を築くため自身の素顔を明かさないよう努める3人の緊張感が家庭に漂うなか、純粋なアーニャから突拍子もない一言が飛び出したり、どこか抜けているヨルが予測できない行動を起こしたりー-。

 フォージャー家に漂う張り詰めた空気はまるで風船が破裂するかのように壊され、思わず笑いがこぼれてしまう。映像として表現される、テンポよく繰り返されるフォージャー家のやり取りには高いドラマ性があり、サブスクリプションサービスで一気見したくなるような中毒性を感じるはずだ。

モダンな雰囲気と子どもの可愛らしさ

 斬新なシチュエーションから生み出されるコメディ要素もさることながら、作品全体のモダンな雰囲気も本作の魅力として欠かすことはできない。

 ロイドやヨルの服装やアーニャが通う学校「イーデン校」をはじめとする街並み、コミックスの表紙でキャラクターと共に描かれるミッドセンチュリーの家具からつくり出される作品の世界観。フランスのファッションブランド「ディオール」と『SPY×FAMILY』がコラボレーションしたことは、本作のモダンな雰囲気を象徴する出来事として挙げられる。

 そして奮闘するあまり空回りしてしまう姿や、異性として意識しながらも素直になれない様子、お父さんに認められたいという思いなどーー。アーニャをはじめとする不器用であどけない子どもたちの可愛らしさは、多くの人の心を掴むものであろう。

 作品の雰囲気はアニメ『ドロヘドロ』の音楽プロデュースを担当した「(K)NoW_NAME」がつくる劇中BGMによって演出され、可愛らしい子どもたちは『約束のネバーランド』を手掛けた嶋田和晃氏、アニメ『進撃の巨人』を手掛けた浅野恭司氏の両者が総作画監督を務めるアニメーションによって表現される。アニメとして映るモダンな雰囲気と子どもの可愛らしさは、より幅広い層のファンを獲得することが予想される。

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