【今月の1作】オススメの恋愛&ラブコメ漫画特集 連載中の注目5作品を紹介
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『アオのハコ』三浦糀(集英社)
「週刊少年ジャンプ」で連載中のある恋愛漫画が、いま熱い注目を集めている。三浦糀の『アオのハコ』だ(現在3巻まで発売中。単行本の累計発行部数は55万部突破)。
主人公は、中高一貫のスポーツ強豪校でバドミントン部に所属している猪股大喜。彼は毎朝、体育館で顔を合わせる女子バスケットボール部の先輩・鹿野千夏に淡い恋心を抱いていたのだが、なんと突然、その憧れの千夏と一つ屋根の下で暮らすことになる。また、何かと大喜に話しかけてくる新体操部の少女・蝶野雛も魅力的で……と、その物語はまさに恋愛ドラマの王道だ。
しかし、作者はこの『アオのハコ』を、ただ甘い理想を描いたラブストーリーに終わらせるつもりはないようだ。王道でも既視感がないのは、ご都合主義に見えないストーリーテリングと、ラブコメには珍しい“熱さ”があるからだろう。そもそも大喜が千夏に惹かれたのも、およそ1年半前――ギリギリのところで全国大会出場を逃した彼女が、悔し涙を流しながら体育館でひとりシュート練習を続けている姿を見たからだった。そんな彼女と同じくらい頑張れるアスリートになりたいと、大喜は思う。この描写に説得力があった。
この作品の根底にあるのは、自分の好きな道で、尊敬する相手と同じように高みを目指したいという、主人公のひたむきな想いだ。あらためていうまでもないことだが、ただ単に、年上の美少女に憧れている少年の物語、というだけでは、いまどきこれだけ多くの読者の共感は得られまい。
恋も部活も全力で頑張る主人公ーーと、言葉にしてしまえばやはり王道だが、それでも手に汗を握って応援したくなるのが『アオのハコ』だ。「ジャンプ」の連載に彩りを与える作品としても、当分目が離せそうにない。(島田一志)