『神様のバレー』はなぜ異色なのか? 「弱小校の成り上がり物語」を超えた充実感
監督を務めるのは、女子バレーの元・全日本候補だった鷲野孝子。明るい性格だが、天性の資質でのし上がったタイプゆえに理論や合理性とは無縁である。「気合と根性」が口グセだった彼女が、阿月の影響下で成長していくのも読みどころだ。阿月と監督、阿月の右腕として活躍する2人のアナリスト、個性豊かな選手たちーーそれぞれの性格も葛藤も存分に語られるなか、常に「なぜ?」という問いに読者もさらされる。そのことがいわゆる「弱小校の成り上がり物語」を超えた充実感をもたらすのだ。
正攻法では勝てなさそうな相手に戦略で打ち克つ快感、スポーツ以外の場面でも応用できそうな心に響く至言も大人の読者に支持を得る理由だろう。知的で冷静だが、めっぽう口が悪くて暴言もしばしば。それでいてここぞという場面で熱くゲキをとばし、思い描いた通りの結末へと導く阿月はまるでオーケストラをつかさどる指揮者のようだ。
バレーファンはもちろん、多くの人に読まれてほしい隠れた傑作である。現在27巻が刊行されているが、一度読み始めたら止まらなくなること間違いなし!