『モンキーピーク the Rock』のクライマックスに期待高まった理由 読者も洞窟を這って進む探検者のひとりだった

モヤモヤの先にある発見

『モンキーピーク the Rock(1)』

 鬼猿は、長らく正体が謎とされてきました。しらび山編の『モンキーピーク』でも鬼猿の謎を解き明かすことはなく、鬼猿の出自が語られるのかと期待された前日譚『モンキーサークル』でも放置されたことは前述の通りです。

 満を持して始まった続編『モンキーピーク the Rock』は、洞窟遭難と小さな猿集団との戦いがメインだったため、いよいよ鬼猿は『スターウォーズ』のチューバッカさながら「そこに存在するもの」として受け入れなければならないのかといった雰囲気がありました。

 急展開を見せたのはクライマックスに差し掛かろうとした時。もちろん、ここまで引っ張ってきたので小出しではありますが、要となる事実が明らかになったのです。正直、今更感は否めません。しかし、筆者は素直に驚きましたし、登場人物らもとても驚いていました。

 ただ、立ち止まって考えてみれば、スピンオフにして前日譚の『モンキーサークル』を除けば、『モンキーピーク』と『モンキーピーク the Rock』の主人公 早乙女綾が知らない情報は読者もほとんど知らなかったはず。こと、鬼猿に関しては、登場人物を差し置いて読者だけが知れた情報は皆無といっても過言ではないでしょう。

 つまり、読者は物語の成り行きを追うだけの傍観者ではなく、キャラクターたちと一緒に山を登り、洞窟を這って進んだ探検者のひとりだったと考えられるのです。筆者が猿の正体が知りたくてシリーズをずっと追い続けていたのと同じ年月を、早乙女たちと共に歩んでいたと考えると、本作の登場人物に親近感と愛着を感じるのにも納得です。

 そして、一読者として5年も待たされるとモヤモヤしますが、主人公とともに歩んだ冒険だったと考えれば、何百年にもわたってひた隠しにされてきた猿の真実に5年で辿り着くことはラッキーと言えなくもない、とも思えるのです。

 というわけで、ついに終焉を迎える『モンキーピーク the Rock』はどんな結末になるのでしょうか。すでに週刊漫画ゴラクでの連載は終了していますが、筆者はコミックで楽しみたいので9巻発売の2022年1月19日を心待ちにしながら、改めてシリーズを通して読み直したいと思います。

 『モンキーピーク』、『モンキーピーク the Rock』はAmazonのKindle Unlimitedで一部無料で楽しむことが可能。未読の方はぜひ手に取ってみてください。

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