“スマホ脳”になるメカニズムとその対処法は? デジタル社会による「脳のハッキング」を考える

 他に自制心を働かせることで得られるメリットとして本書で挙げられているのに、「マシュマロをすぐに1個もらうより2個もらうために15分待てる4歳児は基本的に、数十年後に学歴が高くいい仕事に就いている」という有名な心理学の実験結果がある。どうも優等生的で堅苦しい将来像だし、学歴や社会的地位が拠り所だと、結局いずれはSNSで友人知人たちとステータスの競い合いをしそうな気もする。半年ほどでスマホに依存しつつある私のような、怠惰な落第生で意志の弱い人間にも魅力と思えるメリットはないものだろうか。

 読者がスマホとの付き合い方について考えるきっかけを作ろうとする本書に、我慢したご褒美についてごねるのはお門違いだとは思う。医療以外でも、出版やスポーツ・映画・音楽などさまざまな分野で、スマホなしで過ごす時間の有意義さと、そこで何ができるか多様な選択肢を提示しアピールしてほしい。それが、これ以上スマホに時間のシェアを奪われないためにも、必要となるはずだ。

 その際の参考書としても最適な本書は、スマホ脳でない人たちにとっても必読の一冊として、まだまだヒットを続けそうである。

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