木之本桜はなぜ愛されるのか? 大人目線で考える『カードキャプターさくら』の魅力
自分のことも相手のことも大切にできる
そして桜を愛され主人公たらしめている理由は、桜の父親である藤隆が桜の兄である桃矢に言ったセリフに特に表れている。
「さくらさんは自分も自分のまわりのひとの事も大切に出来る子だから」
『カードキャプターさくら クリアカード編』5巻P75より
周囲の人を大切にしようと努力している人は多いかもしれないが、自己肯定感を持って本当の意味で自分のことを大切にできる人は少ないように思う。桜は自分が周囲の人々に支えられ、そしてまた自分も周囲の人を支えているのだということに自覚的で、卑屈にも自暴自棄にもならない。大人になると、それがいかに難しく、素敵なことかと思わされる。
「いいな。みんなの笑顔」
『カードキャプターさくら』3巻P50より
他人の幸せが自分の幸せでもある桜。また、他人が自分のことを応援してくれていることを自覚し、それに応えようとさらに頑張る姿こそが愛される理由だろう。
もちろん、これは漫画の世界の話であり、現実とはかけ離れた理想像だと思う人もいるだろう。しかし、実際に桜の生き方に感化された人が周囲にいたり、自分がそうなろうと努力すれば、生きづらさを感じている人にも変化があるのではないか。ちなみに、作者のCLAMPのメンバーの一人である大川七瀬はとあるインタビューで、「マンガは素敵な人を描くのが仕事だ」という趣旨の発言を残している。
昔からのファンも初めて触れる人も、『カードキャプターさくら』は大人になったいまだからこそ読みたい作品だ。きっと、素敵な発見があるだろう。