『重版出来!』はなぜ最高のお仕事漫画なのか 漫画制作の裏側を描いた作品が注目を集めるいま、あらためて分析
漫画家・中田伯の仕事人としての幸せとは
最新刊となる17巻では、漫画家として天性の素質を持つ中田伯がフィーチャーされている。休養期間を経て、コミック最新刊の発売、アニメ製作と一気に周辺が動き出す中田の心情が丁寧に描かれている。
中でも、アニメ制作会社と、原作者である中田のチューニングを合わせていくシーンが興味深い。どんな作品にも伝えたいことはあるが、読者の手に渡った時点で「何を受け取ってもらうか」はゆだねることになる。それでもせめて、アニメの制作側にはできるだけ正確に思いが伝わってほしい、というのは原作者の切なる願いだろう。どうすれば伝わるか、どうすればくみ取ることができるのか。双方の心のぶつかり合いが印象的だ。
順調そうに見える中田のキャリアだが、彼のそばにはいかなるときにも闇がつきまとっているようにも見える。充実した日常が送れているようでいて、落とし穴がありそうな、そんな不穏さがある。中田は「ボクには漫画がある」と食らいついているが、そこに幸せはあるのか。この物語の主人公のひとりでもある漫画家の幸せの追求は続いている。