今夜放送『それでも愛を誓いますか?』 原作から考えるドラマの見どころは?

 生きていると、時々思ってもみないことが起きる。

 長く付き合っていた恋人にフラれたり、“推し”が突然結婚を発表したり、友人や家族と些細なことから大げんかになったり。だけど多くの人は大学を卒業した22歳から定年となる65歳まで、1日あたり約8時間×週5日、“社会人”という表の顔を被って生きている。中には結婚、妊娠、出産、子育てや親の介護など、大きな選択を迫られている人もいるだろう。それでも痛みを抱え、ふと泣き出しそうになりながらも、何とか気持ちを切り替えて仕事に打ち込んでいる。

 そんな当たり前のことに気づかせてくれるのが、松本まりか主演で10月2日からドラマ化される萩原ケイクのマンガ『それでも愛を誓いますか?』(双葉社)だ。

 本作は日本最大級の電子コミックサイト「めちゃコミック」で1500万ダウンロードを突破し、2020年上半期総合1位&年間総合2位を獲得。結婚8年目に突入した子どものいない30代夫婦が抱く悩みや葛藤をリアルに描き出したストーリーで読者の共感を呼び、今も上位をキープし続けている。

 主人公は35歳のパート主婦、純須純。4歳年上でゼネコン勤めの夫・武頼との仲は悪くないが、“セックスレス歴5年”という状況に一人苦しんでいた。「なんで子供作らないの?」と悪気なく向けられる言葉に傷つき、どんどんと卑屈になっていく。出会った頃の自分に戻れば、夫にまた女として求められるかもしれないーーそう思った純は派遣社員としてフルタイムで働き始め、5年ぶりに勇気を出して自ら夫を誘うが、冷たく拒否されてしまう。

 そんな2人の関係性にさらなる揺さぶりをかけるのが、純が会社で出会った23歳の新入社員・真山篤郎と、武頼が高校の同窓会で再会した元カノ・足立沙織だ。

 『にぶんのいち夫婦』(原作・夏川ゆきの、漫画・黒沢明世/祥伝社)や『サレタガワのブルー』(セモトちか/集英社)、『ただ離婚してないだけ』(本田優貴/白泉社)など、2021年に入り次々と電子コミックサイトで話題となった作品がドラマ化を果たしている。これらの作品の多くは、“不倫”や“セックスレス”が起点となって紡がれる物語だ。本作『それでも愛を誓いますか?』もその2つのテーマを内包しているが、稀有な点はエンターテインメント性よりもリアルさを追求し、あらゆる登場人物の視点から冒頭で述べた人間の“生きづらさ”みたいなものを描いているところだろう。

 妻の「子供がほしい」という願いに真正面から向き合うことを避けている武頼、そんな武頼に高校時代と変わらぬ不思議な魅力をもって言い寄る足立。ともすれば悪役になりかねない2人にも、それぞれ抱えている思いがある。武頼は20代から母親の介護で苦労した純を支えようと激務に身を置いており、シングルマザーの沙織は自身が教師を務める中学校や生徒の親から連絡やクレームが常に入り、プライベートな時間はほぼない。“男性らしさ”の呪い、長時間労働、子育てと仕事との両立……昨今メディアやSNSでも度々話題に上がる社会問題が浮かび上がってくる。

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