アニメ放送スタート『平穏世代の韋駄天達』が注目される理由 異色のSFバトルの新しさ

 また韋駄天を人々の「思念」から「発生」した存在として描いている点も、本作の重要なポイントだ。反則級のパワーやスピードを持つ韋駄天だが、彼らには母となる生物が存在しない。人間の祈りを受け取り“人類の滅亡を阻止する存在”、それが韋駄天である。そのため人のような感情を持って生まれた訳でも無く、滅亡しなければ人類に手を貸さない彼らは、倫理観が完全に崩壊しているのだ。

 作中ではイースリイが魔族の脳を改造して味方に引き入れたりと、およそ主人公サイドとは思えない行動が随所に散見される。おそらく彼らは目の前で1人の人間が殺されても、何も感じないだろう。むしろ人間と繋がっている魔族の方が、倫理的な振る舞いをしていると言ってもいい。このキャラ設定によって巻き起こる神々の倫理観の崩壊が、善悪の区別を曖昧にし、読者をさらなる混沌へ導く。

 『平穏世代の韋駄天達』は「戦いを知らない闘神」を、なんでもありの現代バトルテイストに落とし込んだ異色のSFバトル作品である。未だ判明していない謎が張り巡らされ、まさに“ノールール&ノーリミット”を地でいく本作。TVアニメと共に、原作にも注目していこう。

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