『ウマ娘 シンデレラグレイ』で読む、名馬“オグリキャップ”伝説 ウマ娘は競馬界への追い風になるか
『ウマ娘 シンデレラグレイ』でオグリキャップは、ボロボロになった靴を履き替え本領を発揮する。実在のオグリキャップもひづめの内側が腐る疾病で苦戦していたのが、治療を施すことで一気にブレイクした。
同じカサマツで走っていたフジマサマーチというウマ娘とのライバル関係。トレーナーの北原が中央のトレーナー資格を持っておらず、伯父に預けて中央トレセン学園に送り出す離別。外から一気にぶち抜き優勝する走りっぷり。競走馬のオグリキャップに関わるエピソードを思わせるストーリーがコミックスでも描かれる。成り上がり、壁に挑み、乗り越え栄冠を掴むスポ根マンガとしても傑作になりそうだ。
実在のオグリキャップがクラシック登録をしておらず、伝統の「東京優駿(日本ダービー)」に出られないことが分かって、出場を求める世論が起こったエピソードも重なってくる。5月19日発売の最新刊『ウマ娘 シンデレラグレイ3』ではそんな、オグリキャップのクラシック出場をめぐる周囲の熱い動きが描かれる。
アニメ『ウマ娘 プリティーダービー』で脚を骨折したサイレンススズカが、モデルとなった競走馬のような悲しい運命を辿らなかったように、独自の展開も盛り込まれることもある世界だけに、展開が気になるところだ。
当のオグリキャップといえば、内にレースへの熱い思いを持ちつつ、表面的には天然キャラでとてつもない大食いぶりを見せてくれる。ゲームアプリでは、他のウマ娘たちも、トレーナーにドロップキックを見舞う傍若無人さで人気キャラとなったゴールドシップを始め、お嬢様やヤンキーやギャルといった、シリーズならではの属性を割り当てられている。
そうしたウマ娘たちをキャラとして愛でつつ、モデルとなった競走馬の過去に触れ、競馬の奥深さにも関心を広げていく。『ウマ娘 プリティーダービー』や『ウマ娘 シンデレラグレイ』が呼び水となって、オグリキャップのブームを超える賑わいが競馬界に訪れるか。
■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。
■書誌情報
『ウマ娘 シンデレラグレイ』1〜2巻発売中(ヤングジャンプコミックス)
漫画:久住太陽
脚本:杉浦理史
漫画企画構成:伊藤隼之介
原作:Cygames
出版社:集英社