『パタリロ!』『ガラスの仮面』『あさりちゃん』……時代を生き抜いた、長期連載の少女漫画たち

 2021年4月5日、さいとう・たかをの『ゴルゴ13』の200巻が発売され、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の世界記録に並んだ。これまでも少年誌・青年誌の漫画は数々の大長編を生み出してきたが、100巻を超えるものは数少ない。そして、それ以上に長編が少ないのが少女漫画だ。

 以前、1970年代に活躍したとある少女漫画家に取材でお会いした。当時の少女漫画家の作者は、女性であれば10代デビューがほとんどで、20代で引退することが多かったという。今のようなデジタル作画もなかった時代。私はまだ生まれていなかったので想像するしかないが、その時代に青春期を迎えた方々の話を聞くと、「どのような職業でも、結婚・出産で退職する女性が今より多かった」と言う。少女漫画家の女性たちが長期間漫画を描き続けるのがどんなに難しいか具体的なイメージが湧いた。

 そんな中、1970年代にスタートし長期連載に至った少女漫画がある。その中から3つ、印象深いものを紹介したい。

1.『パタリロ!』

 まずは少女漫画で100巻を超える快挙を成し遂げた『パタリロ!』だ。『花とゆめ』(白泉社)で連載を開始したのは1978年で、現在は『マンガPark』(同社)で連載中、既刊102巻と、少女漫画では異例とも言える長期連載だ。

 作者の魔夜峰央は1973年にデビューし、その後5年ほどホラー漫画家として活躍した。当時の画風はギャグ路線に転向した後も活かされ、華やかな絵と内容のギャップに多くの読者が魅せられた。

 70年代といえば、24年組(昭和24年前後生まれ)と呼ばれる漫画家たち、例えば萩尾望都の『ポーの一族』や竹宮惠子の『風と木の詩』が新しい少女漫画の可能性を切り開き、一世を風靡していた時代。

 『パタリロ!』は架空の国「マリネラ」を舞台に、王様になった10歳のパタリロがはちゃめちゃな活躍をする。『ポーの一族』で登場したポエムを基にした「クックロビン音頭」ができ、アニメ版では主題歌の一節に加えられたり、『風と木の詩』のような美しいフィクションとしての同性愛が扱われたりしている。

   萩尾や竹宮より少し年下で、デビューも彼女たちより後だった魔夜が24年組に影響を受けたのは間違いない。魔夜は男性だが、少女たちの需要をしっかりとつかみ、そして斬新なギャグで大いに笑わせた。他誌の作品のパロディも、その要因のひとつかもしれない。

 『パタリロ!』は登場人物や画風を変えながらも、少女向けギャグ漫画の原点とも言える存在になり、アニメ化・実写化・舞台化もされている。

2.『ガラスの仮面』

 連載期間で考えると『パタリロ!』より長いのが美内すずえによる『ガラスの仮面』。

 『花とゆめ』での連載開始は1976年だ。その後、発表の場は『別冊花とゆめ』に変わり、現在は休載中である。既刊49巻だが、この漫画の醍醐味は内容の濃密さにある。

 主人公は一見平凡に見える少女・北島マヤ。実は彼女には類まれな演技の才能が秘められていた。元大女優の月影千草に見出され、さまざまな役を演じ女優として成長する。マヤには多くの災難が降りかかるが、演技への熱意によって乗り越えていく。主人公が血のにじむような努力をして成果を出すことは『ガラスの仮面』と所謂「スポ根」漫画に共通している部分だが、題材を舞台演劇に変えたことは斬新だった。

 読み進めていくうちに、一見平凡に見える主人公マヤが天才型、ライバルで監督の父と女優の母を持つ美少女・亜弓が努力型だということがわかってくる。亜弓は恵まれた環境にいるが、「親の七光り」と思われることを非常に嫌っている。周囲からちやほやされても決してうぬぼれない。月影千草と同様に、マヤの天性の才能をすぐに見抜き、彼女の演技を見ては何度も打ちのめされる。亜弓はもう一人の主人公とも言える存在なのだ。私が子どもの頃はすでに物語は中盤まで進んでいたが、同級生と「マヤ派」「亜弓派」に分かれて会話を楽しんだ。累計発行部数は2014年に5000万部を突破した。