淡い恋、失われぬ友情、恩師への感謝……『こち亀』読者の心を震わせた珠玉の感動回4選

お化け煙突が消えた日(59巻)

 両津が小学生時代、担任のゲタ先生が入院してしまい、臨時で大学から佐伯羊子先生が教鞭をとるため赴任する。

 いたずら好きな両津は教室のドアを開くとバケツの水が落ちるいたずらを仕掛け成功するが、先生は怒るどころか泣いてしまう。その姿にショック受けた両津は、いたずらを仕掛けることを止めることにする。

 ある日かつて東京都足立区に存在していた火力発電所の煙突「お化け煙突」を見に行った両津は、佐伯先生と遭遇。そこで、あと3日で学校から離れることを告げられる。当日、お別れ会に姿を見せない両津といたずらグループの3人。佐伯先生は「何かあったのかしら」と心配する。

 3人はあるものを先生に見せるためお化け煙突に向かっており、敷地内中に入ると警察が「入ってはいかん」と止めてくる。ここで2人が警察を抑え、両津はお化け煙突のてっぺんめがげて走る。そして上から教室のカーテンで作った「佐伯先生どうもありがとう」と書かれた垂れ幕を広げ、電車で移動する先生に見せた。

 「一生分怒られた」という両津らいたずらグループは、久しぶりにお化け煙突の見える場所を訪れる。すると、3本あったはずが、2本しか見えないことに気が付く。近くに行ってみると煙突は鉄球で破壊されていたのだった。

 場面が現代に戻ると、お化け煙突の写真を見て驚く中川に両津は、「壊されるときはあっけないものだぞ。本当にお化けのようにすっと消えてしまったよ、あの煙突」「下町っこには、あの煙突は思い出だらけだよ」と語った。

 「お化け煙突」は東京都足立区に存在していた千住火力発電所の煙突で、付近住民に愛されており、解体が決まった際には反対する人も多かったという。そんな人々に愛された「お化け煙突」を垣間見ることができるエピソードだった。

シルバーツアー(45巻)

 町会長から敬老会でハワイに行く予定が、旅行会社に騙され、断念することになったと聞かされた両津。何とかハワイに行かせてやりたいとかけ合うが、予算は1人1万5000円で、とても行くことができないことを知る。

 それでも諦めない両津は、なんとかハワイ気分を味あわせてあげたいと一肌脱ぐ。一行をマイクロバスに乗せると、謎の添乗員「バッキー両津とアロハハワイアンズ」に変身。そして空港に偽造した航空博物館を訪れると、プロペラのジェット機に一行をエスコートする。

 飛行機の前方部分はバスの上に載せられており、移動を開始。この飛行機は、解体中だったのだ。そのまま飛行機を上部に乗せたバスは神奈川県の三浦海岸へ。途中、飛行していると偽装するため、ハワイ諸島の写真を窓一面に見せる努力も行う。

 三浦海岸につくと、サーファーを「てめえら向こういけ」と蹴散らし、ハワイ感を演出。「あそこに見えるのがダイヤモンドヘッドです」と説明する両津だったが、参加者は「江ノ島に似てるなあ」とポツリ。カメハメハ大王像もなぜかちょんまげをしており、それを突っ込まれるが、「ガイドブックが戦前のもの」と破り捨てた。

 この後も免税ショップの存在を聞かれ、「代理で買ってくる」と言って麗子に買わせた両津。予約でホテルの一番高い部屋に泊まってしまう、酒を飲んでしまえばわからないと毎回宴会をするなどして、経費が300万円かかり、ハワイに行くのと変わらなくなってしまった。

 数日後、詐欺をした旅行会社が捕まり、騙された金額が返ってきたことを中川に明かす部長。「戻った金でハワイに行けますね」と笑う中川に部長は「いや、敬老会のご厚意ですべて両津にあげることに決めたらしい」「本物のハワイ旅行より楽しかったそうだ。あいつもたまには人に喜ばれるようなことするんだな」と話す。

 キャビンアテンダント役などで協力した麗子も「気づいていたのね、ここはハワイだって騒いでいたのは両ちゃんだけですものね」と笑った。

 破天荒に見える両津が、詐欺を受けた高齢者をなんとか楽しませようとする優しさと、両津の気持ちを推し量り、嘘と知りながらも最後まで楽しみ、お金を返還した敬老会。両者の思いやりが垣間見える心温まるエピソードだった。

『こち亀』を読んで明るい気持ちで新年を!

暗いニュースが多く気持ちが滅入ってしまう昨今のご時世。不朽の名作『こち亀』の心温まるエピソードを読み、少しでも明るい気持ちで新しい年を迎えたいものである。

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