鈴木保奈美が語る、ママ友への友情と信頼 「苦労して助け合ってきた戦友みたいな感覚」

書くことは、自分の中でモヤモヤしたものを整理整頓する作業

――ネタのストックなどは、メモなどされるほうですか。

鈴木:書くことはだいたい決めておいて、家で2~3時間座れるときに一気に書くスタイルですが、ネタはメモしないです。していた時期もあるんですけど、なんだかメモすると色あせるんですよね。頭の中でグルグル浮遊させておいて書くので、忘れて飛んでいっちゃうものもあるんですけど、それはそういうものだな、忘れちゃうくらいのものなんだとあきらめることにしています(笑)。

――お芝居することと、文章を書くことで、共通している部分はありますか。

鈴木:文章を書いていく中で改めて感じたのは、自分の心は、自分が思っているより実は面白い動き方しているのかも、と感じたことで。ありがちな定型の表現で語ってしまいがちなことでも、「いや、もうちょっと落ち着いてみたら、違う感じ方をしていることがあるかも」と考えるとき。これはお芝居での作業に似ていて、例えばお芝居では、悲しいシーンでワーッと泣く以外に、悲しいけど笑っているとか、笑いもしない、何もしないで水を飲むことが一番悲しいとか、感情の出方がいろいろありますよね。お芝居するとき、例えば一行のセリフにしても、違う言い方をしたらどうだろう、違う顔をしたらどうだろうなどと、いろんな方向を探る作業をいつもしているので、それが文章を書くときにも、そのときの自分にピッタリした感覚を探す作業につながっている気がします。

――お芝居と書くことと、相互に良い作用になっているんでしょうか。

鈴木:そうですね。書くことは、自分の中でモヤモヤしたものを整理整頓する作業なんですよね。そして、ふわっと広がっている様々なものの中からこれだと思う1点を見つけ出す作業は、お芝居するときの助けにもなっていると思います。

――連載は今も進行中ですが、次に本を出すとしたら、どんなものを書きたいですか。

鈴木:ゼロからストーリーを作るような小説は絶対に無理なので、自分が旅行好きということもあって、旅行ガイドみたいなもの、旅の紀行文は書いてみたいかな。この連載も今後どんな方向に変化していくのかわからないですし、それも含めてこれからの楽しみにしたいです。


■書籍情報
『獅子座、A型、丙午。』
鈴木保奈美 著
出版社:中央公論新社
発売日:2020年12月9日
定価本体:1,400円(税別)

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