年齢差カップルの“禁断ラブストーリー”は今、どう描くべきか? 『私の少年』と『恋のツキ』から読み解く

 どこか神秘的な雰囲気すら感じる『私の少年』とは対照的に、現代に生きる女性をリアルに描いた人間味溢れる作品が、新田章の『恋のツキ』である。

 本作品は、『月刊モーニングtwo』で2016年から2019年まで連載され、2018年にはテレビドラマ化も実現した。映画館でアルバイトをしながら彼氏と同棲している31歳のワコと、映画監督を夢見る15歳の高校生のイコが互いに惹かれ合うというストーリーなのだが、同棲している彼氏を裏切ってイコと浮気し、さらに肉体関係まで結んでしまうワコは、軽率でズルい。

 それでもワコをヒロインとして見守りたくなるのは、アラサーと呼ばれる年齢でぶちあたる厳しい現実が描かれているからだ。家事を一切やらず極自然に自分を見下す彼氏。女は30過ぎたら結婚や出産を考えるべきと当たり前のように言う家族。正社員になれず渋々選んだ3年契約の派遣の事務職。

 同世代の女性ならきっと誰もが一度は実感したことのある女性ならではの生きづらさが、残酷なほどリアルに描かれている。ラストシーンは漫画とドラマで異なるが、共通しているのは、ワコが自分の人生を歩みだすということ。誰かに選ばれることでしか幸せを感じられなかった自己肯定感の低いワコが自立し、自分の好きなことに携わる仕事を始めるというラストは、決して甘くロマンティックなものではないが、地に足のついた等身大の女性像を描き出していた。

 アラサー女性と高校生という完全アウトな恋愛へ大胆に踏み込んだ本作品には、当然ながら賛否両論が巻き起こっていたが、単なる禁断のラブストーリーで終わらず、一人の女性の成長物語へと繋げたことは、まさにこの時代感を反映させた作品だったといえるだろう。

 『私の少年』『恋のツキ』、どちらもすでにエンディングを迎えたが、時代に即した魅力をもつ作品なだけに、今後も多くの人々に愛読されることは間違いない。

■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。

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