『ハイキュー!!』木兎光太郎 コート上のエンターテイナーはいつも誰かのスターだった
「皆のおかげのエース」から「ただのエース」へ
時を経て、木兎はVリーグチーム、ブラックジャッカルへ入団。日向のチームメイトであり、そしてチームには宮侑もいる。チームメイトとなった宮侑は木兎にこう言う。
「俺のセットで決められへん時『調子が悪い』って言い訳せんといてな???」
圧のある言葉だ。しかし、木兎はケロッとして答える。
「ふっふっふ! 当然だ! 俺はただのエースだからな」
木兎の「普通」は「普通じゃない」。彼にとって、どんなボールも打ち切るのが普通のエースなのだ。梟谷時代は、調子が悪いときはチームメイトたちがフォローをしてくれていた。しかし、春高が終れば木兎は卒業だ。そのとき彼が決意したのは「ただのエース」になること。
楽しいことをしていたい木兎。それでも、春高の期間はもうすぐやってくるチームメイトとの別れを惜しんでいたのかもしれない。春高が始まったばかりのとき、赤葦に向かって、「やっぱりもっと皆とやりたかったなー!」と言っているのが印象的だ。
中学時代、木兎の熱心な練習に他の部員たちがついてこなかった。陰口を言いながら、こっそりと練習から姿を消す。でも梟谷のチームメイトは、言いたいことは言いつつ、みんな木兎を愛していた。
烏野高校が準々決勝で敗退した春高。梟谷は決勝に進出。しかし、一歩及ばず、準優勝に終わった。勝ちきれなかったのは自分のせいだという木兎に、チームメイトで同期の木葉が背中を叩く。
「お前…がんばれよ 超がんばれよ…!」
「めちゃめちゃめちゃ応援してっからな ただのエース!!」
「皆のおかげのエース」から「ただのエース」へ。そしてきっと、たくさんの「誰かのスター」になるのだろう。
(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))
■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊44巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html