『SLAM DUNK』三井寿は何度でも立ち上がる 「炎の男」が自分の人生を取り戻すまで

 何も後悔しない、何も失わない人生はない。だとしたら人生というものは、過去に失ったものを未来でどうやって取り戻すかの戦いとも言える。そう考えた時、三井寿にとっての一番のファインプレーは、翔陽戦での連続3Pシュートでも、山王戦での大量得点でもなく、「バスケに戻ってきたこと」なのかもしれない。

 山王戦、限界間近のふらふらの体で三井は呟く。

「おう、オレは三井。あきらめの悪い男…」

 そして、腕も上がらないような状態から鮮やかなシュートを決めてみせる。ボールは微かな音を立ててネットを揺らす。

“この音が……オレを甦らせる。何度でもよ”

 さっきまで疲れ切っていた三井の顔には、力強い生気が宿っている。

 生きていれば誰しも失敗し、転ぶことがある。だからこそ、倒れ込んだ人が再び立ち上がるところを見たいと願う。

 「あきらめたらそこで試合終了」そう教えられた少年は、あきらめの悪い男となって戻ってきた。三井寿はきっと、失ったものを取り戻すだろう。私たちはそれが見たいのだ。何度でも、何度でも。

■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ
Twitter(@erio0129

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