『ONE PIECE』チョッパーはただのマスコットではない 医者としての大きな覚悟

新世界編が幕を開けた『ONE PIECE(61)』

 麦わらの一味において、最初にして唯一の(?)マスコット的な存在であるトニートニー・チョッパー。「ドラム島編」にてルフィと出会い、すぐに一味への勧誘を受けたほどの彼だが、たしかにチョッパーは仲間たちにとって、つねに必要な存在であり続けている。彼の強みはもちろん、その見た目の愛らしさだけではないのだ。

 ルフィ率いるクルーおいて、“船医”という重要なポジションを担っているチョッパー。致命傷ともなりかねない深傷をよく負う海賊たちには、医者は船のマスト(帆柱)と同じくらい“マスト”な存在だ。しかし彼がルフィの仲間となったのは、“剣士”、“狙撃手”、“料理人”、“航海士”の次である。これを早いとみるか、遅いとみるかはそれぞれ意見があることだろう。だが筆者としては、この順番がベストであったように思う。その根拠の一つは冒頭に記したように、彼が“マスコット的な存在”でもあるということにある。

 チョッパーといえば、“青鼻のトナカイ”でありながら、動物(ゾオン)系の悪魔の実・ヒトヒトの実を食べた“人間トナカイ”だ。彼はこの能力によって人間の言葉を話すことができるし、“人獣型”、“人型”、“獣型”など自らの身体を自在に変形させることができる。そのうえ、チョッパー自身が開発した“動物系の悪魔の実の変形の波長を狂わせる薬品”である「ランブルボール」を用いることで、戦闘員としても能力を発揮。元来、小心者の彼ではあるが、ストーリーが進むにつれて医療の技術はもちろんのこと、戦闘員としても格段にレベルアップしつつあるのだ。

 いまでこそ“サイボーグ”や“ガイコツ”などのユニークな仲間がいる麦わらの一味だが、“人間トナカイ”はそのなかでも、一番最初のユニークな仲間であった。加入当初に海軍から「ペット」と目されていたチョッパーなだけあって、やはり見た目が動物の彼が一味に加わるのは、ゾロやナミたちが揃った後で正解だったのではないだろうか。少年マンガらしいボケやツッコミ担当、あるいは海賊マンガらしい荒っぽい人物や軟派なキャラクター、彼らが主人公の仲間として揃うことは、“大海賊時代”を描く『ONE PIECE』で最重要事項だったと思う。そこで次に必要とされたのが、チョッパーだったのだ。マスコット的存在ということで、彼は本作において“癒やしキャラ”という特別なポジションを確立している。そしてこれは逆説的に、彼は「トナカイ(動物)でなければならなかった」ともいえるだろう。

 そんなチョッパーだが、かつて“トナカイ界”での彼はマイノリティな存在であった。“青鼻のトナカイ”というのはやはり奇妙なものだろうし、悪魔の実を食べた“人間トナカイ”は、人間界においても特異である。こうして、“トナカイでもなければ人間でもない存在”として差別を受けていたチョッパーに居場所を与えたのが、恩人であるDr.ヒルルクだ。その恩人の死後、彼はエキセントリックな女医・Dr.くれはに弟子入りし、医術を身につけた。彼が医術を身につけるということは、つまり、自分の居場所を見つける手段でもあったのだろう。誰かに必要とされるための術である。こうして彼はいま、麦わらの一味に居場所を見出したというわけだ。

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