アニメじゃ観れない! マンガで広がる『ソードアート・オンライン』の世界
ゲームのコミカライズ『ソードアート・オンライン ホロウ・リアリゼーション』
『SAO』は何作もゲーム化されており、ゲーム版のコミカライズもある。
ひとつめは2016年にPS VitaとPS4版が、2019年にNintendo Switch版が発売されたRPG『ソードアート・オンライン ホロウ・リアリゼーション』のコミカライズ(作画・緋呂河 とも)。フェアリィ・ダンス編のあとにキリトやアスナ、リーファたちがSAOを元にした新たなVRMMORPGソードアート・オリジンをプレイしたという並行世界(原作とは時系列や一部設計が異なる)を描く。
なかなかに骨太なストーリーと、原作でも扱われる「ゲームと生死」をめぐるテーマ設定(ソードアート・オリジン内ではNPCが死ぬと二度と復活しない。つまりNPCにとってはSAOのようなデスゲーム)が読ませる。そしてなによりこの世界では、原作で強烈な印象を与えた絶剣ユウキが元気に活躍したり、バカな日常パートに参加してくれるのが、これまた涙なしには読めない……。
ふたつめは2019年にPS4、Xbox one、Steam用に発売された『ソードアート・オンライン アリシゼーション リコリス』のコミカライズ(作画・緋呂河 とも)。
アリシゼーション編の舞台となるアンダーワールドでキリトやユージオたちのオリジナルストーリーを描いていく。オリジナルとはいえ、アドミニストレータとの決戦のあとにゲームと原作/アニメでストーリーが分岐する、という流れなので、アリシゼーション編のアニメ第1期を見終えた(原作なら14巻までを読んだ)あと読んだほうが望ましい内容になっている。
ゲームのシナリオは長大なため、コミックスはまだ刊行されたのは1巻だけ。このあとが楽しみな作品だ。
マンガオリジナルの『ソードアート・オンライン ガールズ・オプス』
さらに、完全にマンガオリジナルの作品もある。作画・猫猫猫『ソードアート・オンライン ガールズ・オプス』だ。
これはリーファ、シリカ、リズベットがALOに追加されたSAOの〈天使の指輪〉(リングオブエンジェルウィスパー)シナリオをプレイ中、キリトそっくりの女性プレイヤー(!)に出会うことに始まり、SAOサバイバーである彼女の因縁を掘り下げ、女性同士の友情を描いていく。フェアリィ・ダンス編まで予習済みなら大丈夫。
女性キャラだけでビーチバレーしたりといったサービスシーン(?)もあり、かけあいも楽しい作品だが、ストーリーの本筋は、原作/アニメ本編にも深く関わる殺人ギルド「ラフィン・コフィン」が絡むシリアスなもの。
本編ではメインヒロイン・アスナの存在感が強すぎて賑やかし的なポジションに落ち着いてしまったリーファやリズといった女性陣が好き! という人にオススメ。
『SAO』のコミカライズは無数に出ていて、入り口を間違えたり、どの作品がアニメで言えばどの話のあとなのかなどをよく知らずに触れると「これなんのこと?」「いつの話?」となってしまう。ぜひ上記を参考に、マンガでも広がる『SAO』世界の一端を覗いてみてほしい。原作やアニメ本編とはまた違ったキャラクターの魅力を発見したり、改めて『SAO』を貫くテーマに気付はずだ。
■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。