16歳で結婚と出産を決意……『今日好き』重川茉弥の家庭観とは? 応援したくなる“しゅんまや”の覚悟

意外にも(?)芯の強いしゅんの姿が印象的

 『今日好き』に出演する男子には、露骨にガツガツしているタイプはほとんどいない印象だ。しゅんも積極的というよりやや控えめな性格に見えるさわやかな男子だが、まやから妊娠を告げられたときには産むという決断を受け入れ、それまで住んでいた千葉からまやの住む大阪へと生活・仕事の拠点を移すとまやの父親(まやの描写によるとかなりのコワモテのようだ)に告げた。外見からはうかがい知れないが、逃げずにわずか17歳で父親になることを引き受けたのはなかなかにすごい。

 『今日好き』は2泊3日で誰に告白するのか、告白を受け入れるかどうかにすべての焦点が合っている。しかも出演するのは高校生だから、同じリアリティー番組でも『テラスハウス』のように異性や同性間で「仕事ちゃんとしてんの?」「将来のこと考えてんの?」といった仕事軸で値踏みし合う緊張感はない。

 『今日好き』では出演者たちの仕事観や家庭観は番組内ではほとんど見えてこないのだ。だからこそこの本でまやの家族観やしゅんの覚悟、そしてそれらをまわりがどう見ているのかがわかるのが興味深い。

 妊娠が判明したまやは、同年代でママになった友だちに泣きながら夜通し相談をし、そばにいる友人の子を見て「育てていけるかもしれない」と思えて産むことを決意した、という。

 重川家の5人兄弟を育てるために共働きで夜遅くまで仕事して育ててくれた自分のママがお手本であり、浮気は絶対に許さない、とも語る(しゅんはYouTubeで「好きな映画は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』」と言っていて、大丈夫か?と個人的には思ったが……)。つまり、彼女にとってはお手本になる存在が近くにいたから、出産・育児を引き受けられると決意できたのだろう。

 そんなしゅんまやについてまやの友人3人がコメントを寄せ、「本当にケンカをしないところがいい」「お互いの好きが溢れていて、しかもそれぞれがわかっているところがいい」と言っている。ファンもそういう溺愛しあっているところが好きなのだと思う。

 若年出産の現実を見る・知る前に結婚・出産してしまったとか、そんな年齢で産んで本当に面倒を見切れるのか、などと否定的に語る人もいるかもしれないが、本を読んで、番組や動画で観ているだけよりずっと応援したい気持ちになった。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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