与沢翼が語る、コロナ時代の『お金の真理』 「現在の決断が今後10年を左右する」

 投資家・実業家の与沢翼氏が、お金に愛されるための黄金のルールを著した新刊『お金の真理』を、4月23日に上梓した。コロナ禍による緊急事態宣言の最中に発表された本書は、厳しい現状にあっても豊かに過ごすために、どのような経済活動をすべきかを指南する一冊だ。ときに与沢氏が経験した手痛い失敗談も交えつつ、具体的なアドバイスが語られている。貯蓄、借金、インターネット、家族、断捨離、住宅ローン、港区女子、幸福度……現在、タイ在住の与沢氏にZoomでコンタクトをとり、失敗から学んだことやいま注力するべきこと、その人生観まで、様々な角度から語ってもらった。(編集部)

お金の真理は危機の下でも変わらない

――『お金の真理』が発売されたのは4月23日で、緊急事態宣言が出された直後のタイミングでしたが、そのような状況になることを予見したかのような内容でした。執筆の経緯を教えてください。

与沢:昨年3月に『ブチ抜く力』(扶桑社)という本を刊行した後に、宝島社さんから「お金をテーマにした本を書いてください」と依頼を受けて、去年の11月くらいから書き始めました。もともと今回の本の論調は、いざという時を想定して貯蓄をしていくことの大切さを説くものだったので、ちょうど新型コロナウイルスのニュースが加速し始めたのに合わせて、そのことも追記していった感じです。コロナ禍でも大きく内容を変える必要がなかったのは、お金の真理は危機の下でも変わらないから。どんな時でもお金に困らないようになるには、予め現実的かつ保守的に考えることが必要で、そのため今回の本は厳しめな論調にもなっています。私自身、コロナ禍で色々な計画が中止になってしまったこともあり、まとまった時間が取れたので一気に書き上げました。

――たしかに、一気呵成に書き上げたのが伝わる勢いのある文章でした。体験談をもとに書かれているのも興味深く、過去の失敗も明け透けに語っています。

与沢:私の場合、かつては物事を楽観的に考えるタイプで、「すべてがうまく行く」「私は成功者になる」「景気はきっと良くなっていく」と、自分に言い聞かせるようにやってきたところがあるのですが、それではうまくいきませんでした。人間不信というわけではないのですが、性善説に則って人を信じて任せるだけでは駄目だということを、数多くの失敗から痛感しています。人は怠けるものだし、状況次第で悪事にも手を染めるし、その時は本気で言っていたとしても、後から気持ちが変わることもある。そう考えて、徹底的に考え抜くこと、何事も疑ってかかること、これ以上は悩めないというところまで熟慮した上で決断することを重視するようになりました。

――本書では「過去を『反省』することでしか自分を進化させることはできない」と、失敗を認めることの重要性も説いています。近年の炎上騒ぎを見ていると、失敗をなかなか認めないことで、かえって火に油を注ぐケースも目立ちますが、そのような状況をどう見ていますか。

与沢:良いところだけを見せたいと考えるのは人間の自然な欲求なので、ちゃんと結果が出てから報告しようとか、完璧なものを見せようと思って、失敗をもみ消そうとしてしまうケースは多いと思います。でも、そうして出来上がったものが必ずしも人々に刺さるとは限りません。大事なのは、間違っているところや至らないところを正直に言って、ちゃんと反省すること。その方がかえって人々は味方になって応援してくれると思います。傷を引きずりながら活動するより、膿を全部出してやっていく方が単純に気持ちもいいです。

 例えば、自分の会社が倒産しかけて苦しい状況にあるなら、構造的な問題を抱えているかもしれないので、いっそのこと一度潰してやり直すとか。借金の問題も同じで、まずは完済することを第一目標にして動いた方が良い。私自身、国税滞納金の問題で苦しかった時期は、とにかく払いきることを何よりも優先しました。人間は誰しも弱いところがあるので、失敗もするし、そのことで叩かれたりもする。でも、捨てる神あれば拾う神ありで、苦しいときにも一緒にいてくれる人は一人くらいはいるので、恐れずに膿を出していって欲しいです。私の奥さんは、苦しかったときも一緒にいてくれました。

ーーインターネットで良い面ばかりを発信していると、失敗したとき、余計に言い出しにくいところがあるかもしれません。

与沢:良い格好をし続けるのは大変です。人徳者だと思われたり、成功者だと思われると、社会から「あなたはこうあるべき」というプレッシャーをかけられるので、それはそれで辛いものがあります。自分の実態と社会の評価をできるだけイコールにしていくのが大切で、ネット上に作り上げたイメージだけが立派だと、結果的に本人が苦しむことになるはずです。加工アプリで実際以上に魅力的なルックスを見せたとしても、現実のルックスが変わるわけではないので、むしろコンプレックスが募っていくというか。

 また、一見すると凄そうだけれど、実は大した中身のない人や会社はいま、インターネットに溢れています。例えば投資界隈でも株価が上がった後に「安く買えている」「良いポジションが取れている」とアピールする人は常にいるけれど、その証拠がたとえば動画でエントリーする瞬間、現在、エグジットする瞬間まで詳細に示されることは少ないし、彼らにとっては示す義務もない。それならば、そういう真偽不明の情報に流されて、羨ましがったりするのは本当に時間の無駄です。私はいまタイやドバイなどに住んでいるのですが、ここで過ごす奥さんと3歳の息子との生活こそが現実であって、その中で起こる現実的な課題に集中することの方がよほど大切です。バーチャルの世界を見ているだけで、現実の世界を向上していけないと、インターネットを使うのがマイナスに働く場合もあります。本当に凄い人なんてほとんどいないし、コロナ禍でむしろ成り上がったなんていう人もほんの一握りだけで、実際にはみんなが苦労している。

 憧れの感情を否定するつもりはないし、それがモチベーションになる人もいるでしょう。でも、まずは家族や仲間を大切にして、いま目の前にある課題にしっかり取り組んで、日々の生活を充実させるべきだと思います。

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