日本企業がコロナ危機を生き延びるために必要なのは? 冨山和彦の“痛いところを突くド正論”

 コロナ禍を受けて、日々をいかに過ごしているのか、これからの生活や教育、経済がどうなるのかに関する緊急出版が相次いでいる。

 本書『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』(文藝春秋)も、4月上旬に1週間で書かれ、5月9日に発売された、コロナ禍を受けて日本企業がいかにこの危機を乗り越えるかについての緊急提言の書だ。

 著者の冨山和彦氏は東大法学部在学中に司法試験に合格、新卒でBCGに入社し、スタンフォードMBAを経て2003年に産業再生機構代表取締役に就任。現在はIGPI(経営共創基盤)代表取締役を務める。カネボウをはじめ、数々の企業再生案件に携わり、修羅場をくぐり抜けてきた人物だ。

 経済重視の徹底したリアリストゆえに「日本の大学は、グローバル人材養成機関としてのG型大学と、ローカル経済に従事するための職業訓練校であるL型大学に二極化させるべき」といった提言をしてアカデミズムから反発を招いたことでも知られる。

 経歴から明らかなように、冨山氏はその企業が生きるか死ぬかの危機のときに活躍してきた人である。緊急時には痛みを伴っても、身体の一部を失ったとしても、手術を断行して生き延びることが先決だ。そういう荒行を何度もやってきた冨山氏の、痛いところを突くド正論は平時には煙たがられることも少なくない。しかし有無を言っている場合ではないこんな時期には特にグサリと刺さる。

 というわけでド正論連発の『コロナショック・サバイバル』を紹介してみたい。

現状分析――リーマンショックよりコロナショックのほうが深刻だ

 コロナショックは、人と人が接することを避けねばならないという特徴ゆえに、各国の地場に根付いたローカル経済、人々が国境を超えて行き交い国際商取引を行うグローバル経済、そしてこれらに資金を提供する金融の順に危機が伝播していく。これはちょうどリーマンショックとは順番が逆であり、実体経済への打撃は今回の方がはるかに大きい。

 日本の雇用の8割は中小企業が担っている。そしてその多くがGDPの7割を占めるローカル経済のサービス業(たとえば飲食や介護など)の担い手だ。そこが真っ先に大打撃を受けたのが今回。つまりリモートワークで代替できないような産業が大ダメージを負っており、「リモートワークやネット宅配の市場が伸びているから何とかなる、みたいなことを言っているお気楽な連中がいるが、リアルなローカルサービス産業が吸収している雇用は膨大で、おそらく二桁くらい違うオーダーの世界を比較して代替を期待する議論はナンセンスである」。

 このローカル経済のダメージに留まらず、目下グローバル大企業とその下請け中小企業にまでコロナショックは派生しており、さらには金融機関に波及していく可能性がある。しかし金融クラッシュに至るとローカル、グローバル双方を動かす資金が途絶えて市民生活が再生不可能なレベルにまで傷を負ってしまう。したがってその前に食い止められるかがひとつのカギだ。

 金融のことなんて知ったことか、と思う人もいるだろうが、もちろんローカル経済も、修復不可能なくらいダメージを負う前で踏みとどまれるかが重要だ。しばしば指摘されているように、地場のバス、タクシー会社などの交通機関などが廃業するとその地域に二度と十分な交通網が復旧しない可能性があり、致命的にまずいことになる。

 ではどうやってこの危機を乗り越えるか? 本書の提言はほとんどここに費やされているが、代表的なものを少しだけ紹介したい。

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