『ONE PIECE』の本当の面白さが爆発するのは50巻から! 再読して気づいた、長編漫画でしか味わえない興奮と感動

 対してルフィが一人になる「インペルダウン編」以降は読みやすい。物語は過去にルフィと戦ったライバルが再登場して仲間になるという総集編的な作りとなっており、小悪党的な負け犬キャラが総出演。中でも、道化のバギーがルフィと組んで戦う姿には目頭が熱くなる。

 何より驚くのは、ここまで批判的に書いたことが全て、魅力に変わって見えることだ。その意味で『ONE PIECE』の本当の面白さが爆発するには、50巻強の“溜め”が必要だったのかもしれない。

 長期連載は今の漫画が抱える問題で、個人的には20巻前後が理想の巻数だと思っているのだが、一方で長編漫画を読むことでしか味わえない興奮と感動があるということを『ONE PIECE』を読むと実感する。だから50巻までは我慢して読んでほしいのだが、それが無理なら、序盤の「イーストブルー編」を読んだ後で50~61巻を読み、その後、残りのエピソードに遡ってもいいかもしれない。とにかく、頂上決戦編だけは絶対に読んでほしい。あの迫力は『ONE PIECE』でしか味わえないものだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『ONE PIECE』既刊96巻
著者:尾田栄一郎
出版社:株式会社 集英社
https://one-piece.com/

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