『映像研には手を出すな!』芝浜高校はまるで九龍城や軍艦島! 人工島に自然発生した迷宮の魅力
無秩序の上に成り立つ秩序
この学校を語る上で外してはいけないものといえばやはり生徒会であろう。生徒会は学園内の自治を司っている。書記であるさかきの言葉の端々から、教師と同等の影響力を持っていることがみてとれる。
映像研の設定は今から30年後、2050年の世界を表している。芝浜高校では(何語かは不明だが)様々な人種の生徒が同じ言語を操り、同じ場所に集って学園生活を送っている。生徒それぞれの背景には様々な文化があり、宗教があり、生活がある。その様々なものを学校という一つの場に凝縮させた。その混沌からこの自治が生まれたように感じられる。いや、「生まれた」というよりは「生まれざるを得なかった」のであろう。
ともすれば無法地帯ともなり兼ねない状況から必然的に自治が生まれた。それは、かつての九龍城がそうであったように。人々の暮らしというのはこのようにして成り立っているのかもしれないと考えさせられた共通点であった。
物語が進むにつれ、様々な設定が明らかになる芝浜高校。新しい生徒会棟の建築や空地となっている建造予定地などが登場していることから鑑みると、この学校はこれからも変化をし続けていくと考えられる。
軍艦島は人の住まぬ廃墟と化し観光名所へと変わった。九龍城はこの世から姿を消し幻の城となってしまった。この学校はどうなっていくのだろうか。それを見守るといった意味でも、まだまだ目を離すことの出来ない作品である。
■水城みかん(みずき みかん)
経理・フィットネス・Amazon系を中心に各種Webメディアにて執筆。趣味は漫画・アニメ。AlexaとVODに依存したひきこもり生活を満喫中。
■書籍情報
『映像研には手を出すな!(5)』
大童澄瞳 著
価格:本体552円+税
出版社:小学館
公式サイト