『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨はジャンプ史に残るボスキャラだ DIO、カーズ、シックスに連なる“悪の系譜”を読む

 DIO、カーズ、シックスらに連なって生まれた鬼舞辻無惨。無惨は「すべての元凶でお前が一番悪い」という言い逃れようのない罪状に加え、「同情しようのない小物」という読者を惹き付ける性格が合わさることで、強大かつ魅力的な、それでいて誰しもが滅びを望むようなボスキャラとして成立している。本人のセリフを借りて問うならば、「殆どの人間が千年も生きずに死んでいく。何故お前はそうしない?」……なのだ。

 本性の器が小さいからといって、なぜかザコ敵のような格の低さに繋がることもなく、作中の存在感だけは圧倒的に高い。卑劣な戦いの手段を好むDIOやカーズと違って、意外と悪知恵をあまり使っていないのも「無惨らしい」個性だろうか。それは「悪のカリスマ」と呼ばれてきたような、狡猾さと絶対的な器の大きさを追求するタイプの「悪」とも異なっていて、「ジャンプ漫画の悪の系譜」に対する、見事なアンサーのようでもある。

■泉信行
漫画研究家、ライター。1980年奈良生まれ。2005年頃から漫画表現論の研究発表を始め、現在は漫画、アニメ、VTuber他について執筆。共著に『マンガ視覚文化論』、『アニメ制作者たちの方法』など。@izumino

■書籍情報
『鬼滅の刃』既刊19巻
著者:吾峠呼世晴
出版社:集英社
価格:各440円(税別)
公式ポータルサイト:https://kimetsu.com/

関連記事