バイきんぐ西村、隠しきれない才能がにじみ出た初エッセイ集『ジグソーパズル』を読んで

さて、お察しいただけたでしょう、僕は馬鹿なのです。

 彼の思慮の足りなさはそれはもうぶっ飛んでおり、上京した際に当時付き合っていた彼女のお母さんからもらった餞別をフィリピンパブで使い切ってしまったりだとか、キングオブコントで優勝する直前にお金がなさすぎて大学生のバイト仲間から100円ずつカンパしてもらったりだとか、結膜炎でずっとモザイクがかかったような状態の目でAVを見たら映像が全く見えなかったので音声だけで右脳をフル稼働させたりとか、とにかくエピソードに事欠かない。確実に「もっている」人だ。普通に生活しているだけで面白いことを引き寄せてしまう天才である。そして、読んでいて急にあることに気が付いた。西村の文章は「突っ込みたくなる」のだ。

火吹き棒という、3000円くらいで焚き火の火を大きくする道具をネットで注文したら、間違えて2万円もする斧が届いた。

パソコンを置く台がなかったので、畳の上に直に置いていたのだが、どうしても普通に座って操作するとやりづらいので、キーボードを小脇に抱えて片手でタイピングするという、小室哲哉を彷彿とさせるショルダーキーボードスタイルを編み出した。

ということで僕は舟盛り用の船を買いました。もう何度も使っています。お店で出されるような大きいものではなく二~三人前用の船ですが、家に届いた時はテンションが上がって、一緒にお風呂に入れて湯船に浮かべてみるとすぐに沈みました。浮かべる設計にはなっていないからです。

 なぜそうなった、と言いたくなる文章の数々。相方が西村に魅入られたのはこういうところだったのかと膝を叩きたくなる。突っ込まずにはいられない生態に読み進めながらどんどん取り込まれていく。彼のことをもっと知りたいという気持ちが膨らんでいく。

僕は決して本を出すような人間ではありません。間違いなく、これが最初で最後の執筆となるでしょう。

 読み終えて「はじめに」のこの一文を見て、嫌だ、と思った。まだまだこの人の文章が読みたい。まだまだこの人のことが知りたい。これで最後にしてほしくない。だって、ジグソーパズルはまだ終わってないじゃないか。

■ふじこ
10年近く営業事務として働いた会社をつい最近退職。仕事を探しながらライター業を細々と始める。小説、ノンフィクション、サブカル本を中心に月に十数冊の本を読む。お笑いと映画も好き。Twitter:@245pro

■書籍情報
『ジグソーパズル』
著者:バイきんぐ・西村瑞樹
出版社:ワニブックス
価格:1,000 円+税
https://www.wani.co.jp/event.php?id=6519

参考:バイきんぐ・西村瑞樹、初のエッセイ集を語る 「ネタを書いてなくても“芸人”として本を出せる」
https://realsound.jp/book/2020/03/post-524929.html

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