猫を失った悲しみは猫でしか埋まらないーー『心にいつも猫をかかえて』は愛猫家の心に寄り添う

 ねこライター。そんな肩書きを名乗り始めて、もうすぐ5年になろうとしている。振り返ってみればこの5年で色々な「猫脈」が生まれ、愛猫以外のニャン生にも想いを馳せる機会が増えた。筆者の心の中には何をしていても、どんな気分の時でもいつも猫がいる。

 だからか、村山早紀さんの初エッセイ『心にいつも猫をかかえて』(マルモトイヅミ:絵/エクスナレッジ)の書籍名を見た時、自分と同じ心境の猫仲間がいることを嬉しく思った。

 村山さんは人気シリーズ『コンビニたそがれ堂』(ポプラ社)を手がけ、児童文学作家としても活躍中。彼女の作品は、くたびれた心を包み込む。そんな村山節は本書でも健在だ。

 村山さんはこれまでにペルシャのランコやアメリカンショートヘアのりや子、縞三毛のレニ子という3匹の猫たちを看取ってきた。本書には今でも大切な存在である先代猫たちとの思い出話がしたためられている。なにげない日常の中で感じた幸せだけでなく、愛猫を亡くした時の悲しみもストレートに綴られており、思わず心が共鳴してしまう。

どんなに長く生きて、幸せそうな一生を終えた猫でも、飼い主はもう一日長く生きて欲しかった、と泣くものなのです。たぶん。

 村山さんの猫愛は、現在共に暮らしている麦わら猫・千花ちゃんへの想いからも伝わってくる。先代猫を亡くした村山さんは自分の年齢を考慮し、次はシニア猫を迎えようと思っていた。しかし、インターネット上のとあるサイトに掲載されていた1匹の子猫の写真に目が釘付けに。「この猫だ」と思い、収容されている長崎県の動物管理所へ行き、一般的な猫よりも尻尾が短い千花ちゃんを家族に迎えた。

 運命的な出会いを果たした千花ちゃんは村山さんにとって、「健康的に生き続ける理由」に。子猫がやってきたことで規則正しい生活をするようにもなった。そして、千花ちゃんを迎えたからこそ生まれた作品もある。それが『コンビニたそがれ堂 猫たちの星座』(ポプラ社)だ。

『心にいつも猫をかかえて』中面より(絵:マルモトイヅミ)

 日本では昔、しっぽの長い猫は老いると猫又になるという言い伝えがあり、しっぽの短い猫が好まれた。それがもし本当なら、千花は猫又になれないんだな……と、ふとかわいそうに思ったことから、村山さんは猫又に憧れる子猫のキャラクターを思いつき、同作を完成させたのだ。妖怪になってもいい。むしろ、長く生きてくれるのなら妖怪になってほしい――。千花ちゃんの短尾に対する想いの裏には、そんな猫飼いあるあるな“猫愛”が隠されているように思え、微笑ましくなる。

 先代猫を亡くし、ポッカリと空いてしまった心の穴。それを満たしてくれたのも、また猫だった。失恋が恋でしか埋められないように、猫を失った悲しみも猫でしか埋まらないように思う。だから私たちは、猫という動物を永遠に愛し続けてしまうのかもしれない。

関連記事