丸山ゴンザレス×八尋美樹が語る、インド旅行の不思議な魅力 「帰ってきたら経験者同士の共通言語になる」

 丸山ゴンザレス氏と世界トラベラー情報研究会が編集する『旅の賢人たちがつくったインド旅行最強ナビ』は、旅人たちが経験したユニークな体験談を盛り沢山に詰め込んだ、読み物としても楽しめる旅行ナビゲート本だ。

 丸山ゴンザレス氏が「旅人たちが直面する事象はいつだってケースバイケースで、その時のその人にしか起こらないことだから、対処法をノウハウ化するのはキリがないし、面白くもない。それよりむしろ、先人たちの体験談を読んで自分の中に落とし込むことで、旅に対する応用力を培ってほしい」との編集方針で作った本書には、昨今のエピソードのみならず、10数年前の尖ったエピソードもフラットに収められていて、どこから読んでもインドの多面的な魅力が感じられる仕様となっている。

 丸山ゴンザレス氏と、インド映画ツアーの発起人として本書に寄稿している八尋美樹氏に、改めてインドの魅力を語り合ってもらった。(編集部)

ハイデラバードが『バーフバリ』の聖地に

丸山:今回、八尋さんに来てもらったのは、本書の中でも特に映画『バーフバリ』の舞台をなぞるツアーというのが、個人的に興味深かったからです。八尋さんはこれまで何回、インドに行きましたか?

八尋:ちょうど先週、帰ってきたところなんですけれど、47回目のインドでした。行き始めて23年になりますが、未だに行くたびに新しい発見があります。最近は映画のツアーの仕事をしている関係で、南の方、ハイデラバードやチェンナイを訪れることが多いです。

丸山:ハイデラバードには観光名所と呼べるようなところは何もない印象ですが。

八尋:以前は本当に何も気づかなかったですね。私、若い頃はガッチガチのバックパッカーだったんですけど、ハイデラバードなんて通りすぎるだけでした。でも、日本ではあまり知られていませんが、テルグ語映画っていう映画の本拠地で一大産業になっているんです。2017年に日本でも公開された『バーフバリ 伝説誕生』は、テルグ語映画として初めて世界的にヒットした映画で、後編の『バーフバリ 王の凱旋』をきっかけに前後編とも日本で多くのファンが生まれました。私は日本で公開されるよりもずっと前、2017年に後編の『王の凱旋』をインドで鑑賞していて、「ロケ地に行ってきました」みたいなことをブログやTwitterに書いていたら、映画のファンの方から「私も行きたい、ツアーを組んでください」という声をいただいて。普通のOLさんがインド、それもハイデラバードにいきなり行けないじゃないですか? で、よく考えたら私は以前、旅行会社で添乗員をやっていたこともあったので、じゃあツアーを組んでみようかなと。撮影地であるラモジ・フィルム・シティという世界最大の映画村のオープンセットが閉まってしまう寸前だったので、急ごしらえで準備したところ、30万くらいの結構良い値段になったんですけれど、蓋を開けてみたら定員15人があっという間に埋まって。みんな、そんなに行きたかったんだなと思いました(笑)。

丸山:222ページに皆さんの写真がありますね。皆さんが着ているふわっとしたインド服は、インドに行ってから買うんですか?

八尋:初日に私がインド服ブランドのお店に連れていきました。皆さん、「これが明日からの戦闘服ですね」と言って、値段も見ないで4~5枚購入していました(笑)。こういう服は日本に売っていないし、乙女心を大いに刺激するみたいで。決して安くはないんですけれど、「こういうのが欲しかったんです」と言って、スーツケースに入りきらないほど買っていました。

丸山:彼女たちはもともとインドに興味があった方なんですか?

八尋:映画を通して好きになったみたいです。半分以上が初めての海外旅行でした。もともとアイドルが好きで「推しと同じ空気を吸いたい」みたいなノリで来ている方もいました。見るものすべてが新鮮みたいで、私とは違うところに反応しているのも面白かったです。フードコートで水が売っていたんですけれど、映画に出ているラーナー・ダッグバーティが宣伝している水ということで、「ラーナー水だ!」と言って大量に購入したり(笑)。そういう女子の勢いは私にとっても新鮮で楽しかったですね。

丸山:ツアーは今も継続されているんですよね。メンバーは入れ替わっていますか?

八尋:初期の4回目くらいまでは入れ替わっていたんですけれど、5回目くらいからリピーターも出てきました。参加した回ごとに「王国ツアー第1期生」とか名乗っていて、それが誇りみたいです(笑)。でも、私にとっても第1回は15年ぶりくらいにお客様を連れてインドを周った旅だったので、たしかに印象に残っています。『バーフバリ』の監督が来日していたときに言ってたんですけれど、もともとインドとゆかりのない日本人が熱狂しているのはかなり珍しい現象だそうで、私たちが何回も行ったこともあったのか、『バーフバリ』のセットがテーマパークみたいな感じで残されることになったようです。テルグ語映画っていわゆるボリウッド映画みたいに世界中で配給される作品とは違うし、『バーフバリ』の内容もインド神話をもとにしたコッテコテのインド映画なので、私もここまで注目されるとはまったく思っていませんでした。

丸山:テルグ語ってことは、字幕がないと八尋さんでもわからない?

八尋:わからないですね。でも、2019年9月に『バーフバリ』主演俳優の新作『サーホー』(2020年3月27日日本公開予定)の封切りがあったときには皆さんそれでも観たいといって、2.5日の滞在中に4回観たりしました(笑)。ファンの皆さんの情熱はすごいです。

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