音楽からファッションまで、中国カルチャーが世界的に注目される理由 『中国新世代』著者が語る、ミレニアルズの勢い

ミレニアルズたちのライフスタイル自体が変わってきている

ーー実際に取材をする中で、ここ数年で小山さんが感じた変化はありますか?

小山:私は96年から1年ほど中国に留学していたのですが、その時は自己主張が強く、Yes or Noをはっきり言う人が多かった印象なのですが、最近のミレニアル世代と接していると、遠慮したり、気を使ったり、遠回しに自分の意見を伝えたりと、繊細なコミュニケーションをする人が増えたと感じます。その背景には、SNSで多くの人の目線を意識するようになったこともあるでしょうし、日本のカルチャーがすごく好きで、頻繁に日本に来ているような人が増えたことも影響しているのではないかと。タバコは決められたところで吸うべきとか、ゴミは持ち帰るべきとか、そういうマナーにも敏感になっている印象です。海外の文化に触れる中で、ミレニアルズたちのライフスタイル自体が変わってきているのかなと。

ーー先ほど、ミレニアルズは親世代と大きなギャップがあるとも言っていましたが、そのギャップによって生じている問題はありますか?

小山:親世代との結婚観の違いなどは、多くのミレニアルズの悩みのたねだと思います。中国ではいまだに親が結婚相手を決めるという価値観が根強くて、テレビのリアリティショーでもそういう衝突がそのまま描かれていたりします。社会の急激な変化に、人々の意識がついていけていない部分はあるでしょう。また、世代間だけではなく、都市部と地方のギャップもまた問題なのかなと。地方から大都会に出てきた子は、そのライフスタイルに順応していくのですが、親はずっと田舎にいるから子どもがどういう価値観の中で生きているのかがわからなくて、子どもが求めているものややりたい仕事に対して、どうしても反対してしまうということは少なくないでしょう。本書で紹介されているミレニアルズは、大都会で努力して自分の好きなことを形にすることができた一部の優秀な人たちであって、自分の方向性が見つけられずに苦しんでいる人もいっぱいいるはずです。

ーー急速に発展しているからこその軋轢もあるわけですね。

小山:そうですね。今の中国は本当にあらゆるもののスピードが早くて、その分、残酷な部分もあると思います。何かがブームになっても、次のものが出てくればすぐに消費されて、人々は新しいものに飛びつく。この本を書いている時点でも、新しい番組が始まっていましたし、新しいスターが生まれていました。お店とかも、すごく流行っていたのに、数ヶ月後に行ってみたらもう違うお店になっていたということもざらにあります。しかし、それゆえにどんどん新しいカルチャーが生まれていて、刺激的であることは間違いありません。まだまだすごいものが登場してくるはずなので、本書をガイドにぜひ中国のカルチャーに触れてみてください。

■書籍情報
『中国新世代 チャイナ・ニュージェネレーション』
小山ひとみ 著
価格:¥1,760(税込)
単行本(ソフトカバー): 216ページ
出版社:スモール出版

【もくじ】
はじめに
第1章
オンラインプラットフォームが生む新しいエンタメ
ヒップホップ、アイドル、ストリートダンス
第2章
ファッション業界を牽引するミレニアルズ
新世代のデザイナーとファッションの最前線
第3章
多様化する映画とドラマ
「中国映画」の変化と「時代を映す鏡」としてのドラマ
第4章
ミレニアルズのライフスタイル、希望と悩み
恋愛、結婚、趣味、仕事
おわりに
Column
中国でバンドブーム再到来?
「アートブックフェア」が人気の理由
パフォーミングアーツ(舞台芸術)と検閲

関連記事