『全裸監督』『スカム』『サギデカ』……ドラマ原作に新潮流、実録モノ&新書から良作が?

 もう一つ、面白い流れだと思うのが、新書を原案とする作品である。代表例は『スカム』(MBS)と『サギデカ』(NHK)といった振り込め詐欺を題材にしたドラマだろう。『スカム』は鈴木大介の『老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体』(ちくま新書)を原案としている。『老人喰い』は振り込め詐欺の世界に足を踏み入れた若者たちの姿とその背景をまとめたノンフィクションなのだが、小説仕立ての描写が多く、例えば振り込め詐欺の研修場面はそのまま映像化されている。

鈴木大介『老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体』(ちくま新書)

 一方、『サギデカ』では鈴木大介の名前は取材協力としてクレジットされているのだが『老人喰い』と共通する場面が多数あり、同時に書籍にはなかった警察サイドの描写をふんだんに盛り込んでいる。この二作のような、新書で紹介されている現代的なトピックを元にフィクション化していく流れは今後、増えていくのではないかと思う。

 このように原作モノといっても多種多用であり、ここで紹介しなかったものの中では、韓国やアメリカのドラマのリメイクも、一種の原作モノだと言える。どのような題材でも書き手が問われるのは、脚色のセンスだ。それは言い換えるなら原作の内容をいかに理解し、ドラマの中に落とし込むかという批評的視点である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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