高橋芳朗 × つやちゃんが語る、PSYCHIC FEVERの凄み「R&Bの流儀に向き合って、この時代に見事に体現している」

高橋芳朗×つやちゃんが語るPSYCHIC FEVER

 グローバルなステージでの活躍を加速させ、確かな実力と独自の音楽性で国内外の音楽ファンを魅了し続けているPSYCHIC FEVER。そんな彼らが去る8月8日、SGCホール有明にて『PSYCHIC FEVER JAPAN TOUR 2026 "THE ROOTS" ~FINAL~』を開催した。グループ初となる単独ホール公演であり、念願の生バンド編成でのパフォーマンスも実現した本公演は、彼らのポテンシャルの高さを改めて証明する一夜となった。

 今回は、ブラックミュージックや現代ポップスに造詣が深い音楽ジャーナリストの高橋芳朗と文筆家のつやちゃんの両名が同公演を鑑賞。ライブの構成やパフォーマンスの凄みはもちろん、グループの基盤にある確固たる「R&B」への真摯なアプローチ、最新アルバム『DIFFERENT』の音楽的達成、そして「需要」が先行して広がっていく独自のグローバル展開まで、さまざまな視点から彼らの現在地と特異性を語り合ってもらった。(編集部)

ナチュラルにR&Bの香りが漂ってくるようなグループは貴重

ーー今回はPSYCHIC FEVERの魅力について、お二人に語り合っていただきたいと思います。お二人には、8月8日にSGCホール有明にて開催された『PSYCHIC FEVER JAPAN TOUR 2026 "THE ROOTS" ~FINAL~』をご覧いただいていますが、その時が初対面だったそうですね。

つやちゃん:そうなんです。ただ、以前に私がライターの川口真紀さんと監修させていただいた『オルタナティヴR&Bディスクガイド』(DU BOOKS)という本で高橋さんにご寄稿いただくなど、川口さん経由でご一緒したことがあります。

 そもそも私は、学生時代から高橋さんが書かれた記事を多く読んでいました。音楽雑誌『bmr』を一番読んでいたのが休刊になる少し前、2000年代の後半で、その頃高橋さんは多く書かれていましたよね。今日久々に『bmr』を開いたら、R&Bのカバーアルバムの特集や、プロデューサー関連の記事などで、やっぱり高橋さんが原稿をたくさん書かれているんですよ。あとは2001年に刊行された分厚い『R&B/HIP-HOP DISC GUIDE』(ブルースインターアクションズ)などでも、高橋さんのレビューをたくさん読ませていただいてきました。

 最近は高橋さんがラジオなどでK-POP関連の楽曲を紹介されていることも多いですよね。自分もK-POPや、今回のPSYCHIC FEVERのようなダンス&ボーカルグループが好きなんですが、ブラックミュージックを深く聴いている人でK-POPも好き、という方が意外と少なかったりして。高橋さんのラジオでの現代のポップスに対する研究やコメントはすごく参考になりますし、共感しています。思いっきり影響を受けていますね(笑)。

高橋芳朗(以下、高橋):ありがとうございます、うれしいです。自分はもともと雑誌編集をやっていたのでついついそういう視点で見てしまうのですが、つやちゃんさんみたいな方が執筆陣にいると編集者として本当に助かりますよね。さまざまな媒体で重宝されているのも納得です。こなされている量もフォローされている幅も素晴らしくて、そのうえで確実にフレッシュな視点を提供してくれて。音楽ジャーナリストのレーダーチャートがあったとしたら、つやちゃんさんはきっときれいな五角形ができあがると思います。

ーーお互いのバックボーンを踏まえた上で、今回は8月8日にSGCホール有明にて開催された『PSYCHIC FEVER JAPAN TOUR 2026 "THE ROOTS" ~FINAL~』の感想から伺っていきたいと思います。ここ数年の彼らを取り巻くグローバルな状況や人気を考えると、今回が初の単独ホール公演だったというのは少し意外でした。

高橋:今のダンス&ボーカルグループ、特にボーイグループに関してですが、R&Bが音楽性の基盤になっていることを強く感じさせてくれるグループ、ナチュラルにR&Bが薫り立ってくるようなグループはK-POPを含めてもかなり貴重だと思っていて。それこそがPSYCHIC FEVERに惹かれる大きな理由でもあるわけですが、今回初めてライブを観てグループのR&B濃度の高さが想像以上で驚きました。これは音源だけではわかりませんでしたね。

つやちゃん:ガールズグループを含めて見渡してみても、そこまでR&Bの文脈をしっかりと押さえてやっているグループってあんまりいないですよね。曲単位でR&Bテイストの楽曲をリリースすることはあっても、作品全編にわたってR&Bの香りが漂っているようなものをしっかり提示できるグループは確かに珍しいです。

高橋:音楽的な選択肢の一つとしてR&Bを取り入れるケースはよくあると思うんですけど、PSYCHIC FEVERのR&Bに対するスタンスは明らかに本腰ですね。今回の公演を例にとっても、ずばり『THE ROOTS』をタイトルに掲げたツアーで初めての試みとしてバンドを導入して、なおかつ椅子に腰掛けてじっくり歌を聞かせるセクションが中盤に割と長めにとられていて。R&Bをベースにしているグループの矜持が至るところから感じられました。

つやちゃん:いわゆる一般的なダンス&ボーカルグループの枠組みや定義から、どんどんハミ出してきているなという感じで、前回ライブを観た時よりさらにそれを強く感じました。今おっしゃった椅子に座って歌うアコースティックなセクションもそうですし、バンドを入れたり、DJパートがあったり。バンドあり、クラブあり、アコースティックありという感じで、単に「歌って踊って終わり」という枠からどんどん外れて、グループの可能性が広がっている印象を受けましたね。

ーーバンド編成でのライブは、メンバーにとっても念願だったそうです。海外でツアーをする中で、アメリカなどでは生バンドと一緒に演奏しないと一流のショーとして認められない、といった肌感覚があったらしく、生バンドでしっかりと自分たちの音楽を表現するというのは今回の一つの大きな挑戦だったみたいですね。

高橋:なるほど。ここ数年でマイアミ・ベース/アトランタ・ベースがグループのシグネチャーとして完全に定着したと思うんですけど、それらの楽曲をショウのなかでどう聞かせてくれるか、個人的にとても楽しみにしていたんです。実際どうだったかというと、まず「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」を序盤に惜しげもなく投入して。そのあと、「Love Fire」と「What's Happenin'」を椅子に座って落ち着いたアレンジで披露すると、「If You're Mine」は最新アルバム『DIFFERENT』のセクションの冒頭でパフォームしていました。そんな具合にセットリストの要所要所にアトランタ・ベース調の楽曲を振り分けつつ、それぞれ違った角度から楽しめるような工夫が施されていて。これは大変見応えがありました。アトランタ・ベースがグループの「売り」になっている中、各々の出来の良さを踏まえるとメドレーなどでまとめるようなことがあったらあまりにもったいないと思っていたんですよ。でも、それは杞憂でした。細かい部分かもしれませんが、こうした巧みな構成がライブ全体の満足度の高さにつながっていた印象です。

PSYCHIC FEVER - If You're Mine (Official Music Video)

つやちゃん:バンドの話で言うと、原曲から結構アレンジが加えられていましたよね。ただ音源をバンドで再現しているだけじゃなくて。バンドアレンジをライブ用に変えて、そこにまた歌を合わせるって準備も大変だと思うんですけど、そこを難なくこなしていたのもすごいなと思いました。ギターが効いている曲などは、80年代のマイケル・ジャクソンみたいにハードロック的なギターサウンドが鳴っていたりして。個人的にも好きなテイストですし、あの時代を思い出すようなアレンジもあって楽しかったです。

高橋:どうしてもR&Bをキーワードにして観てしまったところがあったのですが、そういうなかでニュージャックスウィングな「Wonder Woman」やディスコ調の「Paradise」がものすごく映えていましたね。中盤の「椅子」のセクションでじっくり歌を聞かせた直後に立て続けに披露したことで、R&B表現に音源にはない説得力が加わって。もともとグループのディスコグラフィのなかでもお気に入りの2曲でしたが、今回のライブを経てより思い入れが強くなりました。あと、いちばん歌が届く「椅子」のセクションの最後をファンダムに捧げた2曲、「Nice & Slow」と「ForEVER」で締めていたのも粋でしたね。総じて構成がよく練られていた印象です。

PSYCHIC FEVER - Wonder Woman (Official Audio)
PSYCHIC FEVER - Paradise (Official Music Video)

つやちゃん:メンバーが客席に降りていく演出もありましたよね。ああいうアイドル的とも言えるようなコミュニケーションやファンサービスをしっかり押さえながら、本格的なパフォーマンスも両立してやるんだなと、ちょっとびっくりしました。あそこまでやるグループはなかなかないですよね。写真や動画の撮影がOKなセクションもちゃんと用意されていて、本当にサービス精神が旺盛だなと感じました。

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