Masato Hayashi、全19曲に込めた“今をどう生きるのか”という問い 新アルバム『Iconic』で鮮やかに肯定する過去
Masato Hayashiが9月2日に最新アルバム『Iconic』をリリースした。
『RAPSTAR 2025』(ABEMA)を見届けたリスナーなら、本作『Iconic』にMasato Hayashiが同番組で掴んだ栄光のフォロースルーとしての側面があることを理解するのは容易いだろう。「HIROYUKI」「Ain’t No Love」といった番組で披露された曲はもちろん、SELECTION CYPHER GROUP Bで競い合った面々が揃った「Group Cypher B (feat. will away, 16, nanasi & Yxxg Eye)」など、ここには豪邸の玄関に並ぶトロフィーのように、その軌跡が陳列されている。
流行り廃りのサイクルが異常に速度を増した現代にあって、それはすでに“過去”と言えるが、『Iconic』の素晴らしさは、その栄光以上に、Masato Hayashiの“現在”が刻まれた曲が輝いていることにある。
そのことは、たとえば、冒頭の「星」や「NENE BANANA」にわかりやすいだろう。前者では本作で7曲を手がけるineedmorebuxのトラップビートに乗って〈俺よりやばい奴見たことない俺以外〉〈敵が見てるアリーナでみんなが歌うチャカをパン〉〈マサトがスターって気づいた今/夜を輝かす俺の言葉〉と追い風の吹く自身の現状をラップし、後者ではdubby bunnyのレゲトン風のビートをサーファーが波を捕まえるように乗りこなし、〈忙しそう俺らのジャーマネ〉とユーモアも交えてボースティング。Masatoはキャリアを駆け上がっていく“今”を存分に謳歌しているのだ。
とはいえ、『Iconic』が最も胸を打つのは、Masato Hayashiがトロフィーを掲げてシーンを疾走する自身の姿を俯瞰する瞬間である。
〈足りない 足りない 足りない〉。果てのない欲望を歌う「C1」の前半で繰り返されるこの言葉は、1:23頃のビートスイッチを契機にニュアンスを変える。首都高を走る車の窓からゆるやかに過ぎていく摩天楼を眺めるときのように、スロウになったビートの上で、Masatoは〈行き先俺が決めるいらないガイド〉と、成功を約束された既定のレールに乗るのではなく、独自の道を追求していくことを宣言している。前半の〈足りない〉が際限なく膨張する欲望だとすれば、後半ではその欲望の行き先そのものを他人に委ねない。成功の只中にありながら、その成功に進路まで規定されることを拒むMasatoの冷静さが滲む。
全19曲という長大な作品である『Iconic』には、ほかにも当然、さまざまな聴きどころがある。
Bapopの滑らかなトラップビートに後押しされ、メロウなフックを披露している「Wishing」も、個人的には胸を熱くする瞬間のひとつだ。最近筆者が行ったインタビューで「結果さえ出ちゃえばみんな絶対わかってくれる」(※1)と『RAPSTAR 2025』出場前の心境を打ち明けてくれたが、結果が、つまり行動と成果が周囲の視線を180度変えることを証明するには、行動を起こして成果を出す以外に選択肢はない。そのことを、Masatoは誰よりも実感を込めてこの曲で歌っている。〈覚悟決めてやれば天井ならない/やっと言えた綺麗事を〉というラインはそれを象徴しているだろう。
過去と現在をつなぐという意味では、RYKEY、SEEDAとの「紙とペンと俺とお前」は本作のハイライトである(この曲で2人はフィーチャリングではなく、共同リリース扱いであることも重要だろう)。地元の先輩であり、ラッパーとしてもリスペクトを表明しているRYKEYと、『RAPSTAR 2025』で大きな影響を受けたSEEDAというMasatoの人生におけるキーマンが集結。『RAPSTAR 2025 FINALS』後、Masatoへの評価をめぐってRYKEYがSEEDAに反発し、両者のあいだに緊張が走ったことを知るファンなら、両者がここで同じマイクを回しているだけでも胸が熱くなるだろう。しかし、この顔合わせがさらに意味深いのは、SEEDAの「紙とペンと音と自分」(2008年のアルバム『HEAVEN』収録)を18年越しに現在へ引き寄せていることだ。ぜひ聴き比べて、なぜこのタイトルが“音と自分”から“俺とお前”になったのか、どうやって彼らが“今”を歌っているのか、考えてみてほしいと思う。
そう、あえてまとめるなら、『Iconic』の大きな魅力は、“今”を歌うことで過去を鮮やかに肯定していくパワーにあるのだ。だからきっとタイトルの『Iconic』は、すでに完成されたスターの肖像を指しているのではない。過去も矛盾も引き受け、未来を欲しながら、それでも今この瞬間に自分の言葉を刻み続ける意思を表しているのだ。
前述したインタビューで、Masatoは「今を生きるって、過去と未来を生きることでもあると思うんです」と語っていた。そして、本作中でもひときわいなたいラップを聴かせるラストソング「Letter」では、〈どう生きたかで響き方が変わるこの歌詞〉と歌う。その“今”をどう生きるかという姿勢そのものを、Masato Hayashiは“Iconic”と呼んでいるのではないだろうか。
※1:https://realsound.jp/2026/08/post-2501011.html
■リリース情報
『Iconic』
配信中
配信リンク:https://linkco.re/mcCU4Yh6
<収録内容>
01. 星
02. C1
03. NENE BANANA
04. HIROYUKI
05. Wishing
06. Lowlife (feat. Kohjiya)
07. In The Moment
08. Baby Mama Freestyle
09. TBT TRAP
10. ジェニファー
11. Ring Ring
12. 愛だけど
13. Yellow Lambo
14. 303
15. 紙とペンと俺とお前 (with SEEDA, RYKEY)
16. Ain’t No Love
17. Group Cypher B (feat. will away, 16, nanasi & Yxxg Eye)
18. 神様
19. Letter
■公演情報
『Masato Hayashi ONE MAN LIVE at Shinjuku 暴走東京』
開催日:2026年9月23日(水・祝)開場 17:30 / 開演18:30
会場:Zepp Shinjuku (TOKYO)
『Masato Hayashi ONEMANLIVE at GORILLA HALL OSAKA』
開催日:2026年11月8日(日)開場 17:00 / 開演18:00
会場:GORILLA HALL OSAKA
■関連リンク
公式サイト:https://www.masatohayashi.jp/
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