THE BACK HORNが見せたロックバンドの地力 爆音と熱気で満たされた『爆音灼熱浄土』ファイナルレポ
THE BACK HORNが『THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」〜爆音灼熱浄土〜』と題して全国6カ所を回ったツアーのファイナルを、9月4日に恵比寿LIQUIDROOMで迎えた。「真夏のツアーをやりたい!」と企画して考えたタイトルだそうで、ツアー初日の岐阜CLUB ROOTSは文字通り“爆音灼熱”のライブだったと言うが、9月に入ったこの日は雨模様で秋めいた陽気に。しかし、灼熱な気分を盛り上げる赤いライトで満たされたフロアは、トライバルなSEに乗って彼らが登場した瞬間からタイトルに違わぬ熱気に包まれた。
ステージとフロアが交わす、阿吽の呼吸と熱量
オープニングの「野生の太陽」は、まさにこのライブの始まりを告げる、夜明けの太陽のようだった。ピリッとした緊張感が五感を覚醒させ心拍数を上げていく。この曲が収録されていた2ndアルバム『心臓オーケストラ』のタイトルの意味は、フロアにいる人たちの鼓動が共鳴している、この瞬間のことだったのかと今さらながら思った。続いた「孤独を繋いで」の歌い出しが〈砕け散れオンボロハート〉だったのは偶然なのか意図したものか。
このセットリストを考えた山田将司(Vo)が腕を大きく振ってオーディエンスにコーラスを促し、オーディエンスは腕を上げ力強いシンガロングで応える。もはや阿吽の呼吸と言っていいステージとフロアの応酬に包まれるのは快感だ。歌い終えた山田が「爆音灼熱浄土ツアーへようこそ!」と呼びかけると岡峰光舟(Ba)のベースが唸り「ビリーバーズ」へ。このバンドらしい骨っぽさとオルタナ感のある曲にフロアは揺れまくる。4人のシルエットが浮かんだエンディングをドラムで締めた松田晋二(Dr)がマイクを手にして立ち上がった。
「恵比寿LIQUIDROOM、こんばんは。爆音灼熱浄土ツアー、ついに今日ファイナルとなります。ちょっと秋めいた感じもありますけど、灼熱を皆さんと体験して、皆さんの心の中に清らかな浄土が生じるようなライブにしたいなと思っております。色々な年代の曲たちを用意しています。マニアックヘブンでもアルバムツアーでもないこのライブを、皆さんと楽しみたいと思っています。最後までよろしくお願いします!」
マイクからドラムスティックに持ち替えた松田のイントロで始まったのは「幸福な亡骸」。3rdアルバム収録の曲だがライブで演奏することが多く、句読点的な存在の曲だ。柔らかく始まり、次第に力強さを増していく歌と演奏に自然と引き込まれたオーディエンスから、熱い拍手が送られた。岡峰が赤いLEDをネックに仕込んだベースに持ち替えた「ユートピア」は、山田が促すまでもなくハンドクラップが起こり、菅波栄純(Gt)がギターを弾きながらステップを踏み、ハンドクラップもして盛り上げる。オーディエンスの歓声を受けながら菅波と岡峰がリフを重ねて曲の熱を上げた。その熱のまま「閉ざされた世界」はダークでヘヴィな世界へと誘い、起伏に富んだ演奏で光と影を交錯させる。
続いた「コワレモノ」もそうした彼らの姿勢に裏打ちされた曲だ。岡峰のベースがファンキーなリフを弾き、ドラムとギターが重なると山田が「行くよ」と声をかけて歌い出した。抑制の効いた演奏にラップ調の歌詞が映える。ライブでは人気の曲だが、オーディエンスが待ちかねているのは菅波の合図だ。焦らすようにソロを回す岡峰、菅波、松田を山田が紹介したところでブレイク。菅波が呼びかけた。「俺が“神様だらけの”って言うから“スナック”って言ってもらえるか?」ーー練習するまでもなくオーディエンスとの息はバッチリで、菅波は「やばいな、上手すぎる!」と彼の出身地である福島風のアクセントで言うようにハードルを上げるが、オーディエンスはそれもクリア。バンドとの一体感が深まったところで曲に戻り、歌詞の応酬でさらに熱気が高まった。
トランペットの音が加わり、ジャジーな雰囲気もありながらパンキッシュな棘を感じさせる「戯言」から「修羅場」へ。シンセのイントロをバックに山田が抑えた調子で歌い、サビに入るとオーディエンスのハンドクラップが小気味好く響いた。昨年シングルとしてリリースされたが、彼らの重要なモチーフである“光と影”を歌い込んだ曲であり、早くもライブでは重要な曲のひとつになっている。それだけにオーディエンスの思いも強く伝わってくる。それを察したように、曲が終わると菅波がタオルでオーディエンスをあおいだ。
少し空気を落ち着かせるように穏やかな歌になった「いつものドアを」も、曲が進めば山田は声をうわずらせ、菅波はギターを切り込むように重ねる。山田がギターを持った「I believe」が終わると松田が再びマイクを手にした。
「LIQUIDROOM、最高の夜になっております。夏のツアーをやりたいということで企画して、夏っぽい曲とかも入れながら全国6カ所を駆け回ってきましたけど、このファイナルを目撃しにきてくれた皆さん、ありがとうございます。灼熱にこだわってるわけじゃないんですけど、暑さにはアツさを! みたいな思いを込めてつけたツアータイトルなんです」
この後は4人での雑談状態になる中で、先ほど菅波がタオルでオーディエンスをあおいだ理由も明かされた。ツアー初日の岐阜が酸欠になりそうなほどの激アツだったため、あおいだところからサウナの熱波師を真似てタオルを振り回し出した、ということらしい。一番詳しい山田が手本のタオル技を見せたりもして雑談コーナーは終了。松田が「灼熱浄土、今日が最後だから今日しかないライブを皆さんと作っていきたいと思います、俺たちにとってライブはかけがえのないものなんだって、そんな瞬間を味わえる、そんな時間にしていきましょう」と話した。