DJ KRUSH×ILL-BOSSTINOが語る、年齢を重ねて到達したヒップホップ表現「生きてる限りはずっとできる」

KRUSH「常に刺激になれたらいいと思ってる」

一一今、BOSSのリリックには、手渡す相手が確実にいますよね。おそらくは同世代のリスナーたち。

BOSS:そうかもね。僕は僕の年齢、経験から見えることしか歌わないんで。そうなると自ずと対象は20代、30代、40代、50代と順を追ってここまできた。

KRUSH:俺はね、聴く側の年齢はあんまり考えてない。ヨーロッパツアーに行くと「若い時にDJ KRUSHを聴いてた、今日は息子連れてきたぜ」ってお父さんに言われたりするの。それでいいと思ってる。ただ、その息子とか若い人たちに64歳の音を聴かせて「ヤベェな!」って言わせたい気持ちはある。「全然衰えてねぇ。逆にヤバくなってない?」みたいな。それを目指してる。そういう音だとさすがにお父さんは疲れるかもしれないけど、そのお父さんも「あぁ、KRUSHだな、相変わらず進化してるんだな」って思うだろうし。「そうだよ、みんな止まんないで行けよ」みたいな気持ちを込めてるところもある。常に刺激になれたらいいと思ってる。

一一ここが、音と言葉の違いでしょうね。

BOSS:そうかもね。インストゥルメンタルの世界との違い。もちろんKRUSHさんは全曲インストではないけど。ただ、言葉は言葉にした時点でその人自身の考えが限定されてしまうからね。

KRUSH:今のBOSSの言葉、共感できるところがいっぱいあるし、そうだよなって思うよ。うちの女房と一緒に聴いたけど、飲みながら「だよね?」って言い合ってた。BOSSも経験積んで今ここに来たかって思う。

一一「BOSS、最近優しくなったね」って言われたら不本意ですか?

BOSS:いや? 別になんとも思わない。俺もともと優しいし。

KRUSH:だよな(笑)。

BOSS:ただ「あんまり簡単に近づいてきたら本気で危ないぞ」っていう気持ちも余裕である(笑)。もちろん下手に出てヘラヘラ笑うつもりはないけど、54歳にもなって怖さだけでコミットしてたら伝わるもんも伝わらないってことは、いい加減学ぶしね。

一一今回、特に響いたのは7曲目の「THE OWNER」でした。〈生きた通りにしか歌えない/歌った通りにしか生きられない〉という一言。

BOSS:これはKRUSHさんの音に引っ張られて出てきた。まずは叙情的な「DIAMOND」みたいな曲から作っていったけど、「今の俺ら、この歳でこんな感じだから」っていうのはヒップホップマインドとして絶対入れたかった。それでこのビートだから「うわっ、キた!」って感じだった。

一一音楽って別世界のファンタジーでも成立しますよね。それでもお二人の表現は、必ず自分の生き方が反映されていく。

BOSS:ヒップホップはこれだと思うけどね。逆にそれでしかないと思う。特にラップなんてズル剥けっつうか、出すことに何の怖さもない表現だから。人様との違いを見せるのに自分の人生以外何があるの? 人様との違いを見せてナンボ、自分はこういう感じでオリジナルなんだって言うのがヒップホップ。全部出さないと人様になんて伝えられないし伝わらない。当たり前のことだと思う、ヒップホップならね。

一一今のBOSSは、そうやって出したリアルが、不思議なくらい他者の背中を押すんです。これは意図していることでしょうか。

BOSS:そこまでは計算してない。どう自分が振る舞いたいか、どう生きていきたいか、だけの話だから。でも聴いてるほうも楽になるよね。「なるほどね。それでいいんだ」って。間違ったって失敗したって、それも全部出してるんだから。それでみんなも楽になるならそれでいいんじゃない?

一一「励まされる」とか「もうちょっと生きてみようと思う」と言われるのも嬉しい感想ですか。

BOSS:別に悪い気持ちはしないけどね。でも俺は何も変わんないよ。言われたところでずっと「別にお前の人生まで背負う気ねぇからな?」っていう気持ちもあるし。そこもヒップホップだね。慣れ合ったり支え合ったりとかじゃねぇから。ひとりで立ってナンボだから。

BOSS「生きてる限りはずっとできる」

一一ゲストについても伺います。「DO NOT DISTURB」でJ-REXXXさん、「TILL THE GLORY」ではJERRY "KOJI" CHESTNUTSさん、「(WE'RE) PAY DREAM BELIEVER」では曽我部恵一さんが歌っています。

BOSS:ボーカリストは3人とも僕が選ばせてもらって、僕がディレクションして、KRUSHさんに紹介していきましたね。

一一曽我部さんが特に意外でした。

BOSS:曽我部くんは去年の秋ぐらい、ほぼほぼ初めて会ってバシッとハマって。その時にはもうこの曲作ってたから、ほんと同時進行。「あ、やっちゃう?」「じゃ、頼んじゃおうかな」って感じでお願いした。

一一「(WE'RE) PAY DREAM BELIEVER」はなかなか重いテーマ。とはいえ絶望させる曲でもないのが面白いです。

BOSS:うん。曽我部くんも「すごい不思議な曲だね」って言ってた。カタルシスもないけど絶望でもない、ほんと今の閉塞感をそのまま歌ってる。これと「BREAKING GOOD」の2つはもう4、5年ずっと書いてたリリックで。世の中どんどん変わっていくから、出すタイミングがなかなか来なくて、その度に世の中に対する自分の見え方に合わせて書き換えていった2曲ですね。

一一今の世の中、国内も世界的にも、ものすごいスピードで変な方向に傾いているように思えるんです。

BOSS:そうだね。

一一そのことを怒りに任せて吐き出せば、背筋が震えるヤバい曲になったかもしれない。だけど、やっぱり余韻のほうが強いですよね、今の表現は。

BOSS:なんかね、特にこの2曲に関しては僕自身も完全には答えを見出せていなくて。変わっていく世界に困惑してる、そこで表現をとどめている。ひとつ線を引いて「俺はこっち側、どっちかが悪」って言えることではなかった。自分の中にも特権性だとか加害性はやっぱりあるし、簡単には言い切れないんじゃないか、っていう気持ちをそのまま音楽にしてみたかった。僕が今まで世界に対して歌ってたことは、もうちょっと明確にハッキリさせるものだったと思う。ただ、それをやるたびに自分の意思は強くなれるしある片一方の陣営は鼓舞されるんだけど、やっぱりそこからこぼれ落ちていく人たち、別の意見を持ってる人たちが同じ数、下手すりゃもっと多い数いるわけで。そういうことを繰り返してるうちに「なんか……これしかないのかな、音楽の表現には」みたいな気持ちが出てきた。この曲は曽我部くんの歌が入ることで、なんとも言えない寄る辺のなさ、漂流してる感じも出てきて。そういうところまで表現してみたかったんだと思う。

一一それは、今だからこそ到達できた境地。

BOSS:だと思う。ここまで作らないとここには行けなかった。

KRUSH:BOSSはソロでもTHA BLUE HERBでも、いろんなアーティストと沢山の作品を出してきたから。コンセプト、シチュエーション、世の中で起きてることによって、もういろんなところに行けるんだと思う。そこは百戦錬磨。

一一お二人とも、経験を積んできた自負が当然あると思います。同時に、あとどれくらい作れるのかって考えることはありますか。

BOSS:僕は、今日思ったこと、明日思ったこと、電車で向かいに座る人を見て想像すること、居酒屋で隣に座った人たちの話を聞いて思うこととかを本気でメモっていったら一週間で曲なんかすぐできるから。だから別に、生きてる限りはずっとできると思ってる。

KRUSH:僕も一緒です。生きてれば作れる。今回BOSSと『XO』を作ったことで次に行かなきゃいけないところも見えてて、もうすでに刺激されて5曲くらい作ってるし。どこまでも行く。いつもと変わらない。

一一自信が揺らぐこともないですか。

BOSS:あります?

KRUSH:俺が「どうしよう? この世界辞めようかな」って一度考えたのは、KRUSH POSSEやってる頃かな。MUROがいなくなった時。

BOSS:めっちゃ昔じゃないですか(笑)。DJ KRUSHにすらなってない。

KRUSH:ラッパーがいなくなって、ソロになってヨーロッパツアー行った時に、僕は元気な曲全然かけなかったし、トリップホップって呼ばれるようなスローな曲ばっかりかけて、お客さんもポカーンとしてて。それで「お前のはヒップホップじゃない」とか言われて、それはショックだったりしたけど。それくらいかな? 心にグサッときた、みたいなことは全然ない。紆余曲折はあるけどね。それを35年跳ね除けてきたつもり。

BOSS:俺もないっすね。もちろん失敗や葛藤も含めての日々だけど、それはそれで欠かせない並走者だと思うし。

一一羨ましいです。

BOSS:考えることあんの?

一一たまにあります。いつまでモッシュピットにいられるだろう、とか。

BOSS:あ、そうなんだ。じゃあジム行ったほうがいいんじゃない?

KRUSH:単純に体を鍛える。

BOSS:それだと思うよ。俺ライブやってても体力があるから強いもん。肉体的な強さってすごく重要で。メンタルを支えるのも実はそれだったりする。

KRUSH:僕、64歳で、10月には1カ月で24箇所のツアーやるんですよ。毎日クルマで移動して、毎日宿泊するところも違って、枕も毎日違う。たまに酔っ払って自分の部屋の番号わかんなくなって、違う部屋のドア叩いて殺されそうになったりする(笑)。でも、ちょっとやそっとじゃめげない。それはBOSSが言ったように体力だと思う。

BOSS:基本だよね。音楽だけじゃなくて遊ぶのも。だからジム行けって。

一一はい(笑)。ありがとうございました!

DJ KRUSH × ILL-BOSSTINO "THE OWNER"【OFFICIAL MV】

■リリース情報
DJ KRUSH × ILL-BOSSTINO『XO』
レーベル:THA BLUE HERB RECORDINGS
発売日:2026年8月5日(水)
仕様:CD/2CD/ダウンロード
購入URL:https://tbhr.lnk.to/xo_2026

①通常盤1CD
仕様:CD (国内プレス、生産限定デジパック仕様、歌詞カード付属)
品番:TBHR-CD-045
価格 : 3,850円(3,500円+税)
バーコード : 4526180737803

②限定盤2CD(インスト・ディスク付属)
仕様:2CD (国内プレス、生産限定デジパック仕様、歌詞カード付属)
品番:TBHR-CD-046
価格 : 5,500円(5,000円+税)
バーコード : 4526180737810

収録曲
1. BUT EXTRA RAW
2. SAY WHAT? TAKE THAT
3. DO NOT DISTURB
4. SKIT: GUARDIAN
5. TILL THE GLORY
6. BREAKING GOOD
7. THE OWNER
8. YOUNG STARR
9. SKIT: MONOLOGUE
10. (WE'RE) PAY DREAM BELIEVER
11. DIAMOND
12. WIZDAMN
13. CAUGHT UP
14. XO
15. WE ALL KNOW

BEATS & CUTS BY DJ KRUSH
LYRICS BY ILL-BOSSTINO
MIXED & MASTERED BY BACHLOGIC
GUEST VOCALISTS: J-REXXX, JERRY "KOJI" CHESTNUTS, 曽我部恵一

■ライブ情報
DJ KRUSH × ILL-BOSSTINO「XO」RELEASE LIVE

①大阪公演
日 程:9月22日(火・祝)
開 場:19:00
開 演:20:00
会 場:大阪・心斎橋SUNHALL
出 演:DJ KRUSH × ILL-BOSSTINO
チケット:前売り5,000円 / 当日6,000円(消費税込、D代700円別)
チケット受付:https://eplus.jp/djkrush-illbosstino/

②東京公演
日 程:9月26日(土)
開 場:17:00
開 演:18:00
会 場:東京・渋谷club asia
出 演:DJ KRUSH × ILL-BOSSTINO
チケット:前売り5,000円 / 当日6,000円(消費税込、D代700円別)
チケット受付:https://clubasia.jp/en/events/260926-xo

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