アフロ、MOROHA活動休止を経てなにを思う? 極論から離れてリアルを歌うーーひとりで見つめる新たな景色
突然のMOROHA活動休止から一年半。ヒグチアイとのユニット・天々高々も始めていたアフロが、ついに個人名義のソロアルバムをリリースした。『無職覚醒』というタイトルには彼らしいド根性が滲むが、内容は想像以上にカラフルかつポップ。渋谷逆太郎(SUPER BEAVER 渋谷龍太)、池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)、ビートさとし(Skillkills)など複数の作曲家が入れ替わるためサウンドの風通しはよく、自分の人生だけではない誰かの人生、名もなき人々の暮らしを歌い上げるリリックも、これまでのイメージを大きく覆すものだ。この取材の前日にはツアー『ひとりずもうの横綱たち』が始まっていたが、そこでのアフロは積極的にフロアに降り、観客ひとりひとりと目を合わせ、「フロアのカリスマがいっぱいいるな!」と笑っていた。誰より大きな声でオーディエンスを扇動してきた彼が、今、ひとりになって思うこと。(石井恵梨子)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
「……えぇ? 嘘ーっ!」ーーMOROHA活動休止に思ったこと
一一昨日(8月4日)のライブ、狭いから表情が近いこともあって、楽しかったです。
アフロ:それ、デカ箱行き過ぎですよ(笑)。(新宿)MARZが狭いって言われちゃったら俺たちけっこう大変なんだから。
一一突きつけられる鋭さもあれば、くだらないことを一緒に笑う感覚もあって。未だガキみたいなところもあれば、このままジジイになっていくぞっていう覚悟も見えたり。ただ一本気なラッパーではなくなったなと思ったんですけど、これは褒め言葉になりますか。
アフロ:……どうでしょう? 感想をいただけたことがまず嬉しいのと、「楽しかった」って言っていただけたことがすべてだなと思っていて。
一一あとは何を言われても引き受けます、ということ?
アフロ:なんか、いい誤解と悪い誤解、オーディエンスとの関係性はそこにしかないと思ってるんですよね。でも、もうちょっとパーティーを小さくしていけば、もっと深く知り合えるんじゃないかと思っていて。ライブって俺の人間性を好きになってもらう場所でありつつ、見てる人も自分の中の何かに気づく場所になってほしい、みたいな願いがある。だから「俺のことどう思った?」よりも「自分のこういうところに気づいた」を聞きたいかな。今はそっちのほうに関心があるんですね。
一一パーティーを小さくするという言葉は、ソロのコンセプトですか。
アフロ:アーティストって危険な仕事だなと思うんです。人より一段上に立って、出てきたら拍手されて、道を歩いてたら「写真撮ってくれ」って言われて。やっぱりおかしくならないほうがおかしい。ただ、もともとを考えれば、友達に聴かせるために作ってた頃って誤解はなかったはずなんですよ。極端に言うと拡声器、マイクを使い始めた瞬間から最初の誤解が生まれてくる。さらに我々はCDを作って音楽を遠くに飛ばそうとしてる。どんどん幻想を売っていく。それ自体は悪いことじゃないんだけど、危険なのはこっちのほうで。発信する側がどんどんしんどくなって壊れていくんです。ファンが抱いた幻想に自分を乗っ取られて、自分がそっちに引っ張られていく。みんなの感想によって自分が作られていく感じ。それは危険なことなんじゃないかなと思って。だからこそ、ただパーティーの一員として自分がいるだけで、ライブの時間になって「そろそろ歌ってよ」って言われて、お客さんから背中押されて「まぁまぁ、とりあえず見えやすい位置に行きますね」ってステージに立つ。そこでラップする状態が、今の俺にとって一番健康的だなっていう気持ちかな。
一一MOROHAの反動のようにも聞こえます。
アフロ:あ、これはMOROHAの時からうっすら思ってたこと。ビジネスの都合で見て見ぬフリしてきたところがやっぱりあって。でも強制的に休止になった時にようやく真っ向から向き合えた。
一一休止の時、アフロさんは率直に何を思ったんですか。
アフロ:「……えぇ? 嘘ーっ!」って。
一一ですよね(笑)。
アフロ:メシも食えてるし、それこそ社会的にもちゃんと認めてもらえてる。親も喜んでるし、街歩けばチヤホヤしてくれる人もいる。「この環境をなぜ手放すの?」っていう気持ちがあって。あとは「まぁ、まだ俺もうちょっと歌いたいことあるんだけどな」とか「よくぞまぁ、この大きい声を出すだけでここまでイケたな」っていう満足感もちょっとあったり。いろんな感情があったけど……でもちょっとワクワクしてました。
一一ワクワクですか。ショックではなく?
アフロ:うん。あの時はなんも考えてなくて、言葉と一緒にそこからの自分を作っていった感じなんですね。
一一アルバム『無職覚醒』には作曲者が複数いますけど、人選は?
アフロ:友達です。ほんとそれだけ。結果じゃなくて過程のほうを大事にしようと思っていて。一緒に作ってる間、ニヤニヤしながら「いいねぇ」とか言い合って作れるかどうか。それを一緒にやれる人をピックアップした感じです。ピックアップっていう意識でもなくて、自然に出会って作っていった感じ。
一一先にアルバムの構想を固めて始めたことでは……。
アフロ:ないです。最初はライブのことも考えてなかったし。単純に「こいつともっと遊びてぇな」「知りてぇな」「この縁は何かあるぞ」みたいなことに反応してた感じですね。もちろんどっかで「やってんだ! ひとりだってやってくんだぞ!」みたいな気持ちもありましたけど。
一一2人で作っていた時と、ソロになってから、何が一番違います?
アフロ:ギャラですね。
一一はははは!
アフロ:ギャラが違います! 大儲け。ありがたい!
一一なんか、もっと落ち込んだのではないか、ドン底まで行ったのではないかと勝手に想像してたんですけど。
アフロ:あぁ、もう忘れちゃったんだよな、止まっちゃった時のこと。「こんなもんだっけ?」って感じなんです。17年続けたバンドが活動休止するってさ、もっとドカーンと来ないとドラマチックじゃないじゃないですか(笑)。まだ喪失感が来てないのかもしれない。