香取慎吾と森且行、“エールの往復”の先にあるもの SMAPの絆ーー「がんばります」の言葉に押される背中
香取慎吾が8月4日、オートレーサーの森且行に祝福のコメントを送った。
「森くん、大きな怪我からの復活優勝、本当におめでとうございます。5年9ヶ月ぶりという長い時間、諦めずに上を目指し、前を向き続けた森くんの優勝に、勇気をもらいました!これからも、がんばってください。僕も、がんばります!」(※1)
森は前日の8月3日、川口オートレース場で行われた優勝戦を制した。優勝は、2020年11月の『オッズパーク杯 SG第52回 日本選手権オートレース』以来、2099日ぶりのこと。2021年1月の落車事故で大怪我を負い、長期にわたるリハビリを経て2023年4月にレースへ復帰してから、初めてつかんだ優勝だった。
香取のコメントで、とりわけ心に残るのは、最後の「僕も、がんばります!」という結びだ。かつての仲間だった森に「がんばって」とエールを送るだけではなく、その姿から勇気を受け取り、今度は自分も前へ進もうとする。そこには、別々の道を歩みながら、互いの挑戦をそれぞれの力に変えてきたふたりの“エールの往復”が見える。もしかしたら、それは森がSMAPを離れた1996年から続いてきたものなのかもしれない。だが、公の場であらためて見えるようになったのが、2017年の『72時間ホンネテレビ』(ABEMA)だった。稲垣吾郎、草彅剛、香取と森が、21年ぶりの共演を果たしたのだ。
番組では、森のヘルメットに青、赤、ピンク、黄、緑、白という6色の星がデザインされていることが大きな話題になった。SMAP時代のメンバーカラーを彷彿とさせる6色だ。森は仲間から力をもらうため、その色をヘルメットに取り入れていると語っていた。
SMAPを離れる際、森はSMAPメンバーと「日本一になる」という約束を交わしていた。もともと運動神経がよく、何事も器用にこなしてきた森。オートレーサーになった当初は、数年ほどで日本一になれるのではないかと考えたこともあったという。しかし、勝負の世界は決して甘くなかった。練習中の落車で大怪我を負い、思うような結果が出ない時間を重ねたこともあった。それでも、森は走ることをやめなかった。
「本当は日本一になってから会いたかった」とは、21年ぶりの再会で森がこぼした本音だ。けれど、夢をかなえた姿だけが人を勇気づけるわけではないのだろう。命がけで自分の選んだ道を走り、まだ夢の途中にいる森の姿は、新しい地図を広げ、自分たちなりの一歩を踏み出したばかりの稲垣、草彅、香取にとっても心強く映ったのではないかと想像する。
そんな森が悲願の『SG日本選手権オートレース』初優勝を果たしたのは、2020年11月。46歳、オートレーサーとしてデビューしてから24年目で手にした、初めてのSGタイトルだった。「日本一になる」という長年の約束を、森はようやく現実のものにした。2021年の元日に放送された『7.2新しい別の窓』(ABEMA)で「日本一になっての再会」があらためて果たされたのは、多くの視聴者の感動を呼んだ。
だが、そんな喜びに包まれたのもつかの間、SG優勝からわずか82日後に、森はレース中の落車で命にかかわるほどの重傷を負う。レースへの復帰はおろか、再び歩けるかどうかさえ危ぶまれる状況だった。それでも森は諦めず、長く厳しいリハビリを重ね、2023年4月にレースへ戻ってきたのだ。
同年、香取が『週刊文春WOMAN』vol.19/23年秋号(文藝春秋)の表紙に“推し活”というテーマで描いた作品がある。そこには黒い背景に青、赤、ピンク、黄、緑が重なり、白い瞳と涙が浮かぶ。香取自身も「メンバーカラーでいこうと思って」(※2)と説明していたもの。香取はキャンバスに、森はヘルメットに、6つの色を置いたのだ。
今年、香取が草彅とともにパーソナリティを務めるラジオ『ShinTsuyo POWER SPLASH』(bayfm)7月19日放送回では、ファンミーティング『NAKAMA to MEETING Vol.5』の会場で配布されたオリジナル新聞を紹介する場面があった。萩本欽一や三谷幸喜らと並び、森からのコメントも寄せられているという。「これからも新しい地図らしくたくさんの人を笑顔にしてね」と、香取は森の言葉を読み上げると、草彅とともに「嬉しいよ」「森くん、書いてくれて」と素直な喜びを口にした。
また、今回の『SG日本選手権オートレース』優勝後にSNSで公開された写真では、森が『NAKAMA to MEETING Vol.5』のグッズである黒いTシャツを着ていたことも話題となった。大怪我から立ち上がり、長い時間の末につかんだ優勝の喜びを伝える一枚に稲垣と草彅と香取のグッズが写っていたことに、胸を熱くしたファンも多かっただろう。
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新聞に寄せられた言葉と、一枚の黒いTシャツ。そして香取の「嬉しいよ」という声。いずれも、絆を声高に宣言するものではない。だが、お互いの日々のなかに、それぞれの存在がごく自然に入り込んでいる。そこに、これまでも、そしてこれからも関係が続いていくという温かさが感じられるのだ。
森は『フィガロジャポン』2025年1月号(CEメディアハウス)のインタビューで、テレビや映画で活躍するメンバーたちについて、「負けず嫌いなので、違う業種だけどみんながトップに立っているのだから、僕もトップでいたいと思う。本当に刺激になっています」(※3)と語っている。レーサーになって28年を迎えても、今でもレース場に立つと「ワクワクする」と語り、「もう一度日本一を獲りたい」と前を向く。その原動力のひとつとして、異なる世界で挑戦を続ける仲間たちの存在があるのではないだろうか。
同じ夏、稲垣と草彅と香取は映画『バナ穴 BANA_ANA』(正式表記はアンダーバーは穴の絵文字)を公開した。2017年に真っ白な地図を広げてから約9年。3人は、自分たちらしい方法で少しずつ活動の場を広げてきた。その歩みが森の刺激となり、再びトップを目指して走る力になる。そして、森が5年9カ月ぶりの優勝を果たすと、今度は香取が「僕も、がんばります!」と返す。互いがそれぞれの道を駆け抜ける姿そのものが、何よりのエールになっているのだと思う。
そのエールはふたりのあいだだけで完結するものではないだろう。思うような結果が出ない時間も、大きな困難に直面したときも、自分の選んだ道を諦めずに進み続ける。そんな森の姿に勇気をもらい、「僕も、がんばります!」と応える香取の言葉に、今度はふたりを見つめる私たちも背中を押されるのだ。
いつも隣にいなくても、頻繁に言葉を交わさなくても、相手の歩みを見守り、その姿を自分が前へ進むための力に変えていく。香取慎吾と森且行が長い年月をかけて交わしてきたエールの往復は、誰かの挑戦が、また別の誰かを立ち上がらせることを教えてくれるようだ。ふたりが送り合う「がんばります」の先には、私たちもまた、もう一歩進んでみようと思える力が宿っている。
※1:https://news.ntv.co.jp/category/culture/93af94517d1a482587e9ff235a6ba34f
※2:https://realsound.jp/2023/09/post-1440196.html
※3:https://madamefigaro.jp/culture/260805-mori-katsuyuki-interview/