f5ve、BACARDIとの再タッグで見せた“自然体”な姿 詩羽とのコラボ、「Tropical Paradise (3am girls)」制作背景を聞く
「世界で戦いたい」。その言葉だけでは、f5veというグループの現在地を正確に表すことはできない。
KAEDE、SAYAKA、MIYUU、RURI、RUIからなるf5veは、単に海外進出を目指す日本発のガールズグループではない。なぜならレディー・ガガ、ジャスティン・ビーバー、マドンナ、テイラー・スウィフトらの作品に携わり、レディー・ガガとアリアナ・グランデによる「Rain On Me」でグラミー賞を受賞したBloodPop®をエグゼクティブプロデューサーに迎え、現代のグローバルポップを形作るクリエイター陣と直接音楽を作っているからだ。
その制作現場では、完成した曲を受け取り、決められた通りに歌うとは限らない。スタジオに入った時点で曲が存在しないこともあれば、メロディだけ、歌詞だけ、あるいは漠然としたイメージだけが用意されている場合もある。メンバーが声を吹き込むと、その個性を受けてトラックが変わり、フィーチャリングの歌い手がゲストに加われば、サウンドはもう一度組み替えられていく。
レコーディングとは完成品を記録する作業ではない。曲そのものが生まれ、変化し続ける時間なのだ。前身であるSG5時代からこうした制作を経験してきた彼女たちにとって、BloodPop®をはじめとする世界的なクリエイターと音楽を作ることは、もはや特別な“海外体験”ではない。f5veのクリエイティブを支える日常の一部になりつつある。
その現在地を鮮やかに伝える楽曲が、“BACARDI Sound Distillery 音楽蒸溜所”から生まれた「Tropical Paradise (3am girls) feat. f5ve, 詩羽」だ。
昨年に続いて同プロジェクトに参加したf5veと、新たなコラボレーターとなる水曜日のカンパネラ・詩羽。プロデュースをBloodPop®、作詞をメンバーのRUIが担当し、夏らしい開放感をまとったポップサウンドの中に、日常から少し離れ、自分らしさを取り戻すためのメッセージを込めた。
印象的なのは、タイトルに添えられた“3am girls”という言葉だ。深夜3時、まだ帰りたくないという高揚感。止まらない会話。通知を切り、夢のような現実に身を委ねる時間。しかし、ここで歌われる〈Escape〉は、現実を投げ出すことではない。頑張り続ける日々の中で、いったん立ち止まり、自分の本音を取り戻すこと。楽しむことを自分に許し、再び歩き出すための居場所を作ることである。
世界的なプロデューサーと音楽を作りながら、〈炭酸〉や〈まだまだ〉といった日本語の響きをポップスのフックへと変えていく。日本らしさを消して世界へ近づくのではなく、日本語だからこそ生まれるリズムやかわいらしさを、グローバルな制作現場で鳴らす。それが現在のf5veだ。
“世界で戦う”のではなく、“世界で作る”。
「Tropical Paradise (3am girls)」の制作背景から、BloodPop®とのスタジオワーク、詩羽の歌声によって変化したサウンド、RUIによる歌詞とボーカルディレクション、そして自然体の5人を捉えたミュージックビデオまで、リラックスしたムードの中、メンバーに話を聞いた。(ふくりゅう/音楽コンシェルジュ)
“TROPICAL ESCAPE”という言葉には、BACARDIの存在がすごく詰まっている
――昨年に続き、“BACARDI Sound Distillery 音楽蒸溜所”への参加となりました。2回目となるコラボレーション参加が決まったとき、まずどんなことを感じましたか?
KAEDE:1回目のときは、お酒のブランドと音楽でコラボレーションすることが、最初はまだ想像できなかったんです。「歌でBACARDIを盛り上げるって、どういうことなんだろう?」というところから始まりました。でも実際にご一緒してみたら、BACARDIチームのみなさんが本当に熱くて。制作だけでなく、一緒にお酒を楽しむ機会もあって、チームのみなさんとの距離もすごく近くなりました。
私たちも「また一緒にやりたい!」と思っていたタイミングで、マネージャーさんから「2回目もあります」と聞いたので、スタジオでみんな「イエーイ!」って声を上げるくらい喜びました(笑)。同じアーティストが2年連続で参加することも、これまでなかったと聞いていたので、ありがたかった嬉しかったです。それに、海外のチームやBloodPop®たちが以前から「詩羽さんと一緒にコラボレーションしたい」と話していたんです。なので、詩羽さんとご一緒できたことも、本当にうれしかったですね。
――今回のブレンドテーマは“TROPICAL ESCAPE”です。このテーマをどのように受け止めましたか?
RURI:最初に“TROPICAL ESCAPE”というテーマが決まっていて、トラックは聴いていたんですけど、歌詞がどうなるのかはまだわからない状態でスタジオに入りました。そこでRUIちゃんが書いた歌詞と仮歌を合わせて聴いたときに、「夏を代表するようなf5veの曲ができた!」と感じたんです。すごくフレッシュで、夏らしいワクワク感がありました。ただf5veの楽曲として作ったのではなく、BACARDIさんとのコラボレーションがあったからこそ生まれた曲なんだ、ということも強く感じました。すごく好きな曲です。
――RUIさんは今回、作詞を担当しています。“TROPICAL ESCAPE”というテーマから、どのように歌詞を広げていったのでしょうか?
RUI:前回のコラボレーションを通して、BACARDIチームのみなさんとすごく仲良くなったんです。そのときの風景や、自分たちとBACARDIチームのみなさんとの思い出を、素直に文字にできたらいいなと思いました。“TROPICAL ESCAPE”という言葉には、BACARDIの存在がすごく詰まっているように感じたんです。だから書きたい風景もすぐに浮かびましたし、日頃の素の私たちを歌詞にできたらいいなと思いました。
――“ESCAPE”には、どのような意味を込めていますか?
RUI: 楽しいことだけではなくて、日常の中には逃げたくなるような気持ちもあると思うんです。でも、自分が好きだと思えることをやれる時間や、息抜きができる時間があるからこそ、自分らしくいられる。そういう意味で、エスケープする時間も必要なんじゃないかなと思いました。
歌詞を書きながら、私自身も励まされたんです。「こういうふう感じでいいよな」って自然と思えましたし、聴いてくれる方にも、無理に盛り上げるのではなく、「一緒に一歩ずつ楽しもう!」という気持ちが届けばいいなと思いながら書きました。言葉がナチュラルにたくさん出てきましたね。
――タイトルの副題にもなっている“3am girls”は、どのように生まれた言葉なのでしょう?
RUI:最初はタイトルを「Tropical Paradise」だけにしていて、“3am girls”は付いていなかったんです。でも、話している中で「3am girlsを付けよう」というアイデアが出てきて。深夜のテンションもありますし、〈まだまだまだ 帰らないまだ〉というフレーズともつながっているので、すごくキャッチーだなと思いました。
KAEDE:〈まだまだまだ 帰らないまだ〉という感じは、すごく普段のf5veらしいです(笑)。
RUI:そうですね。“3am girls”という言葉はあまり聞いたことがないですし、曲のタイトルとしても面白いと思いました。
――歌詞には〈通知は switch off〉、〈夢のような現実(いま)にいよう〉、〈do what moves you〉といった、自分たちの楽園を作るような言葉が並びます。特に印象に残っているフレーズを教えてください。
MIYUU: 私は、詩羽さんが歌っている〈平凡な日々じゃつまんない/けどホントの本音は見えないし〉という部分が好きです。メロディは全然違うんですけど、歌詞を読んだときに「Underground」と近いものを感じたんです。「Underground」も、現実から少し離れて、ありのままの自分を受け入れたり、頑張りすぎなくてもいいと歌っている曲なので。世の中には「いま頑張らなきゃいけない」と思いすぎて、どんどん焦ってしまう人もいると思うんです。自分で自分にストレスをかけて、疲れてしまう。だから、頑張らないことも大切なんだという部分が、この曲にもある気がしました。
RUIちゃんが書いた歌詞だからこそ、自分の中にすっと入ってきましたし、自分を励ましてくれているようにも感じました。メロディはハッピーな印象ですけど、歌詞をしっかり読むと、隣で支えてくれるような曲なんです。「頑張れ、頑張れ」と後ろから強く押すのではなくて、「私がいるから、疲れたときはいったん休んで、楽しいことをやってから、また頑張ったらいいよ」と言ってくれる。そういう歌詞だと思いました。
KAEDE: MIYUUは、RUIちゃんの仮歌を聴いたときから「この曲、好きだわ」ってずっと言っていたよね。
MIYUU: 言ってた(笑)。日本語の歌詞ということもあって、すっと自分の中に入ってきたんだと思います。
――SAYAKAさんは、この曲の世界観をどのように捉えましたか?
SAYAKA: これまでのf5veの楽曲とは、また違うテイストだと思いました。聴いているだけですごくポップな気持ちになりますし、サビの〈まだまだまだ〉と繰り返す部分も、何度も聴きたくなる中毒性があります。振り付けも付いているので、キャッチーさや中毒性を含めて、すごくf5veらしい楽曲になったと思います。
f5veと詩羽の声のブレンドにより生まれた“完成形”
――詩羽さんとは、今回が初めてのコラボレーションになります。実際にお会いする機会はありましたか?
SAYAKA:まだお会いできていないんです。スケジュールの都合でレコーディングも別々でした。
KAEDE:これからお会いできたらいいよね。
SAYAKA:そうですね。ぜひお会いしたいです。
――お互いの表現には、現実とファンタジーの境界を軽やかに越えていく部分があると思います。完成した楽曲の中で、お互いの“らしさ”が混ざり合ったと感じた瞬間はありましたか?
KAEDE:一緒にレコーディングしていないので、その場で感じたわけではないんですけど、実は私たちだけで録った段階では、もっと爽やかでポップな印象だったんです。そこに詩羽さんの歌声が入って、BloodPop®もその声からインスピレーションを受けたんだと思うんですけど、完成版ではベースがより効いていて、少しチルな方向にも変化していました。
私たちは自分たちの声だけで完成形を想像して「すごく爽やかでポップな曲になるんだろうな」と思っていたんです。でも、詩羽さんの声が入ると、BloodPop®の中ではまた別の捉え方が生まれるんだと感じました。「詩羽さんの声なら、こういうサウンドになるんだ」という変化が面白かったですし、そこで両者の個性が混ざったのかなと思います。
――今回は、f5veと詩羽さんの歌が細かく交わっていますね。
KAEDE:前回の「bordercoaster feat. f5ve, 川谷絵音」では、1番をf5ve、2番をコラボレーション相手というように、世界観をわりとはっきり分けていたんです。でも今回は、RUIちゃんが歌詞を書いて、歌い分けやレコーディングのディレクションも担当してくれました。前回はかっちり分けたので、今回はもっとブレンドして、コラボレーションらしい形にしたいという話になったんです。2番から掛け合いを増やすことも、RUIちゃんが考えてくれました。それによって、また新しい色が生まれたと思います。
――BloodPop®とのレコーディングは、いつもどのように進んでいくのでしょうか?
MIYUU:最初にトラックを作って「これ、どう?」とパソコンで聴かせてくれるんです。私たちが「すごくいい!」となったら、そのまま録っていきます。実際のレコーディングでは、「こういうふうに歌って」と細かく決めるというより、かなり自由にやらせてくれるんです。良い声が録れたときには「これ、いいじゃん」と言ってくれたり、「もう少し声のトーンを上げてみよう!」と必要なことだけ伝えてくれたり。
最初にクリエイティブを一気に作って、あとはそのとき私たちから出てくる雰囲気や声に任せてくれている感覚があります。録り終えたあとに、私たちの声に合わせてサウンドがまた変わっていくのも面白いです。本当は、最初から最後までの全バージョンを聴いてもらいたいくらい。それくらい毎回違うんですよ。
KAEDE:本当に違うんです。私たちは途中で、「こっちのバージョンのほうが好きだったかも」と思うこともあるんですけど(笑)。
MIYUU:あるね(笑)。
KAEDE:でも、そのあとにまた変わっていくので、「なぜこの形になったんだろう?」と、BloodPop®の頭の中をのぞいてみたくなります。たぶん、私たちよりもさらに先を見て作っているんですよね。結果、完成形がやっぱりいいんですよ。
MIYUU:いろいろな音のバランスを感じ取る感性が本当にすごいです。毎回、実験をしているような感覚があります。
――最初から完成した曲を受け取るのではなく、歌入れ現場で曲そのものが生まれていくんですね。
MIYUU:そうですね。f5veになる前、SG5としてアメリカへ制作に行った頃から、このスタイルなんです。現場へ行っても曲がまだないことや、メロディはあるけれど歌詞がないこともあります。逆に、歌詞やイメージだけがある場合もある。BloodPop®が、世界的に活躍しているプロデューサーやディレクターを普通に連れてきて、その場で一緒に作ることもあります。毎回すごく贅沢な環境なんですけど、自分たちの中ではだんだん普通になってきていて。改めて外から見ると、すごい環境だと思います。
KAEDE:普通になっているのが、ちょっと怖いくらいだよね(笑)。
MIYUU:そう。でも、BloodPop®と一緒にいるからこそ得られる感覚も面白いですし、それが楽曲にも表れている。その制作環境は、f5veらしさのひとつになっていると思います。