『ユイカ』が描いた本当の青い春=「青春は見えない」 新章を語る「今自分のなかで革命が起きている」

 青春とは、過ぎ去ってから初めて見えるものだ。その見えなかった青春に名前をつけながら、『ユイカ』は今、自分自身の青春を再び手繰り寄せるようにして前へ進んでいるのかもしれない。

 『ユイカ』の新曲「青春は見えない」は、ヒットすることを祈りながら書いたラブソングではなく、自分のために書いた夏の歌であり、彼女にとって本気の一曲でもある。当時はそれが青春だとは知らなかった日々。大人になった今、“あの頃”を振り返って初めて「ああ、あれが私の青春だったのか」と気づく。その発見を、『ユイカ』は「青春は見えない」という一曲に封じ込めたのだ。

 彼女は今、前に進むための成長の只中にある。「青春は見えない」ではアコギでなくエレキを手にした。新しいアーティスト写真では初めてズボンを履いた。そんな柔らかな変化のなかで、彼女は呼吸をしている。それは決して「ラブソングの子」という名札を完全に外していくというわけではなく、新しい名札を加えていくということだ。ここから『ユイカ』の新章が始まっていく――その過程の話を聞かせてもらった。(編集部)

『ユイカ』に訪れたひとつの変革「今までやってきたことが通用しないと自覚した」

――5月にアーティスト写真が新しくなりましたね。アーティスト写真が新しくなるのは、顔出しした2025年1月以来で。

『ユイカ』:前のアー写は、顔出しをするタイミングのものだったので、今までの『ユイカ』のイメージを守りたいと思って。「『ユイカ』といえば水色っぽい、淡い色っぽいイメージがあるよね」とか「おうちのなかにいるイメージがあるよね」とか、そういうイメージを守ったアー写だったんです。だけど今回は、これからはフェスにもいっぱい出ていきたいし、アーティストとしての活動の幅を広げて行きたいというタイミング。だから、プロのアーティストっぽい写真にしたいと思いました。最近はかわいい曲だけじゃなくて、人生観について歌った曲とかも書いているので、“『ユイカ』=ラブソング”だけじゃないイメージも見せていきたいな、って。そういう目標もあって、今回アー写を新しくしました。

――ここから新しい章になるようなイメージ?

『ユイカ』:そうです。アー写を変えたから区切られるというわけではないかもしれないけど、今回はアー写を変えたタイミングで、自分のなかでひとつ区切りをつけたなという感覚があります。今回のフェーズではワンマンだけじゃなくて、フェスやイベントにもどんどん出ていきたい。「外の世界に出てみよう!」というイメージです。

――そう思ったのは、顔出ししてからの一年半である程度の手応えや何かを掴んだからなのでしょうか?

『ユイカ』:もしかすると、逆かもしれないです。今までやってきたことが通用しないと自覚したからかも。これまでは、曲もそうだし、歌い方やライブの見せ方、どれも“『ユイカ』のファン”に向けて作っていた感じがあったんです。『ユイカ』をもともと知っている人に対して「『ユイカ』ちゃん、頑張れ!」と言ってもらいながらやっている感じというか。それはもちろんすごく嬉しいし、心地好くて、できることならずっとその環境でライブをやりたいって思うけど、それだと成長できないから。前に進むため、もっとたくさんの人に知ってもらうために、“TikTok発のシンガーソングライター”という意識から抜け出したいと思いました。だから、楽曲や技術的なことはもちろん、わかりやすく言うと、着る服やヘアメイクも変えていけたらいいなって考えています。

――今回は撮影がないので『ユイカ』さんも私服ですが、今日のお洋服もこれまでのふわふわしたものとは違って黒でシックですもんね。

『ユイカ』:そうそう、そうなんです。これまでライブでもずっとスカートを履いていたんですが、最近はズボンを履きたいという気持ちがあって。今回のアー写も見えづらいんですけど、ズボンを履いているんです。なんなら、ズボンを履くのが今回のアー写でいちばんやりたかったことと言っても過言ではないくらい。“ズボンを履く”というのは、私のなかで大きな目標でした。そういうところも含めて、今自分のなかで革命が起きているなというのがわかります。

“戦略的ラブソング書き士”から“ヘルシー”なモードへ、『ユイカ』の現在地

――先ほど「今までやってきたことが通用しないと思った」とおっしゃっていましたが、フェスにも出演していて、タイアップも続いていて、側から見るとやりたいことができていて順調に見えるので意外でした。

『ユイカ』:それこそアニメは大好きだし、タイアップは本当に嬉しいです。自分が知っているアニメとか、原作漫画を読んでいた作品のタイアップができるのも本当に嬉しい。だけど、自分の書きたい曲を書くこととタイアップは、私にとっては別モノの感覚があって。タイアップは作品に寄り添いたいなと思うんです。タイアップは自分にとって発見も多いし、自分の力になっているので、これからももちろん続けていきたい。でも、そうじゃない曲もみんなに届けていきたいという気持ちがあって。自分の書きたい曲を書くというモードになれたのが最近なんです。

――そういうことだったんですね。

『ユイカ』:ラブソングばかり書いてきたので、ラブソングに飽きているようなところもあるのかも。「ラブソングでバズったから、私はやっぱりラブソングを書かなきゃ」と思っていて。そのなかで「みんなはこういうラブソングが好きなんだ」という研究をしていったんですけど、「ローズヒップティー」あたりで一区切りついたというか。そこで、“私が選んだもの”として本当に自分が書きたいものを書いたり、「お姫様にはなれない」という自分のなかに秘めていた思いを書いた曲を出したりしたら、すごくよかったんですよね。その一方で、アジアツアーのリハでひさしぶりに自分がこれまで書いてきた曲を歌ってみたら「めっちゃいい曲じゃん」って思えて、自分を認めてあげられたんです。だから、この先にラブソングを書かないというわけではなくて、自分の書きたいようなラブソングが書けたらいいなと思う。ここ1、2年は「こういう曲が気に入られるかも」とか「こういう曲だったらバズるかも」とかそういう曲の書き方をしていたから、それを一旦やめてみて、まずは、とにかく自分のために曲を書こうと思っています。

お姫様にはなれない / 『ユイカ』【MV】
ローズヒップティー / 『ユイカ』【MV】

――「こういう曲が気に入られる」とか「バズるかも」という気持ちがなくなったというのは、曲を作るうえではすごくヘルシーですよね。

『ユイカ』:そうなんです! 「ヘルシー」って言い方、いいですね! もらって帰ります(笑)。

――あはははは。ぜひ使ってください(笑)。

『ユイカ』:「恋泥棒。」を書いたのが高校2年生くらいの時なんですけど、その時は「かわいいラブソングを書いた」という自覚はあまりなかったんです。だけど、それがバズったことで「かわいい曲を書けばバズるんじゃない?」というモードになっちゃって。その頃から“戦略的ラブソング書き士”になってしまって。

――でも、数字は目に見えるからバズるとうれしいし、楽しいですもんね。数字を追うことは決して悪いことではないと思います。

『ユイカ』:そうそう。「数字を追いかけることは正義じゃない」と考える人もいると思うんですけど、数字はひとつの指標にはなるじゃないですか。ものさしとしてとてもわかりやすいのが数字だし、結果として表れるのも結局数字だし、人が判断するのも数字だし。だけど、自分を認めてあげるという意味では別に数字は気にしなくていいんだよと思えたというか。「数字がついてこなくても、自分が書きたいことを書けたらOKだよね」と思えるようになった。今はそういう感じで曲を書いているので、気楽モードです……いや、とってもヘルシーです!

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