SUKEROQUEは対極なEP『X』『Y』で何を描いたのか “メロウ”と“グルーヴィ”の先で浮かび上がる真価
作詞作曲からアレンジまでを自ら手掛けるアーティスト SHOHEIによるソロプロジェクト・SUKEROQUEが、7月22日にニューEP『Y』をリリースした。昨年リリースの「滞納」「OYKOT」、今年5月に配信された「METRO」に新曲2曲を加えた全5曲。どの曲もイントロが鳴り出した瞬間に心が騒ぎ肩が揺れ始める、グルーヴィでアッパーな楽曲揃いだ。セルフライナーノーツでSHOHEI自身が「情熱的かつクールに、人生の憂いや悲しい夜を踊り明かしてしまうようなグルーヴィな楽曲を集めてみました」と綴っているように、みんなと一緒に馬鹿騒ぎするのにうってつけのEPである。
もちろん今作単体で聴いても十分魅力的なのだが、実はこのEPにはある“仕掛け”がある。SUKEROQUEはこの『Y』に先立つこと1カ月、6月24日にもう1枚のEP『X』をリリースしている。『X』と『Y』。そのタイトルが物語るように、2つの作品は双子のように対になっているのだ。この“2連作”は、もともと4月に『X』に収録されている「初恋って事にしてくれないか」、5月に前述の「METRO」という、それ自体対照的な配信シングルを2カ月連続でリリースしていたところから、それぞれの側面をEPという形に拡張して生まれたものだという。
もとよりSUKEROQUEは、音楽性という意味では驚くほどに多様な引き出しを持ったアーティストである。SHOHEIがこの名義で活動をスタートさせてからすでに7年ほどになるが、その間リリースしてきた楽曲を並べてみても、パワフルでファンキーなパーティチューンあり、しんみりと心の奥底に響くメロウチューンあり……さらにスタイルという意味でも、ガツンと鳴らすロックサウンドから繊細なエレクトロニックサウンドまでを使い分ける多才ぶりで、楽曲ごとにさまざまな顔を覗かせてきた。そんなSUKEROQUEの二面性をこれ以上ないほどわかりやすくリスナーに伝えるのが『X』と『Y』というEPだ。SHOHEIはこの2作をそれぞれ、SUKEROQUEの“X軸”と“Y軸”という言葉で説明しているが、まさにその通り。2つの軸を定めることで、SUKEROQUEという“座標”が浮かび上がる――『X』『Y』を続けて聴いていると、そんな感覚になる。
先にリリースされた『X』は、SUKEROQUEのメロウでポップな側面にフォーカスした作品だ。収録されているのは、シンセのリフとドラマティックなメロディの展開、サビで聴こえてくるコーラスが都会的なムードを醸し出すポップス「初恋って事にしてくれないか」に加え、昨年リリースされた「雪国」に今年2月リリースの「電話しようよ」、そして「雨」「twilight dance」という今作のために作られた新曲たち。「雪国」はSHOHEIのルーツのひとつでもある大滝詠一を彷彿とさせる瑞々しくもセンチメンタルなポップス。タイトル通り、降り続く雨を窓越しに眺めるような心象風景が淡々と描かれる「雨」に、ゆったりとしたリズムに揺蕩うようなボーカルが印象的な「twilight dance」、そして洒脱なアレンジのなかでSHOHEIのメロディセンスを堪能できる「電話しようよ」……曲ごとにバリエーションを見せながらも、どの曲も優しくて柔らかなSHOHEIの歌声を丁寧に届けてくるのが『X』である。
一方、『Y』のアッパーでファンキーなノリは、そんな『X』の対極にある。その幕開けを飾る「METRO」はJamiroquaiのようなスリリングなシンセストリングスと力強いコーラスが鳴り響くイントロからファンキーに突っ走る楽曲。地下鉄がトンネルの中でぐんぐんと加速していくようなドライブ感がこの曲のキモだ。続く「滞納」は世知辛そうな曲名とは裏腹に……というか、そんな状況に開き直るかのようにアッパーに突き抜ける。小気味よいギターのカッティングやスクラッチ音は問答無用で聴く人をダンスに誘うだろう。「Oolong」は軽やかなピアノリフに乗せて歌われる酒飲みソング。アルコールが入ったときの高揚感をそのまま音にしたような、めくるめく展開が強烈だ。ブリブリのベースラインが楽曲を牽引する「COSMIC JAM」も、タイトなドラムにシンセのオーケストラヒットが盛り立てる「OYKOT」も、フィジカルな盛り上がりをこれでもかと助長する曲が詰め込まれているのが『Y』という作品である。フェイクやファルセットを駆使したSHOHEIのボーカルワークも『X』とは対照的にぐいぐいとリスナーに掴みかかってくる。
まったく異なる顔を見せる2つのEP。それぞれにそれぞれの魅力があって、それこそがSUKEROQUEの音楽の豊かさを証明しているのだが、同時に、こういう形になることで見えてくるものもある。それがまさにXとYの交わる座標、すなわち“SUKEROQUEの立っている場所”である。それを筆者なりに言葉にするなら、ある種の“居心地の悪さ”ということになるだろうか。『X』に収められた楽曲の主人公たちは、みんな“ひとり”だ。愛する人への溢れる想いを語る「初恋って事にしてくれないか」にしろ、〈さよなら街並み 明日僕は旅に出る〉と歌う「雪国」にしろ、1日の終わりに切ない叙情を重ねる「twilight dance」にしろ、ここで歌われているのはいわば独り言のような言葉である。〈逆剥けの街 1人歩いている〉と歌う「雨」は象徴的だが、『X』の歌詞はどれも、いろいろな感情を抱えながら、世界と切り離されて内省の奥深くへと沈んでいく。それがメロウなサウンドと相まって心に響いてくるのだが、実はその感覚は『Y』とも通じ合っている。サウンドだけで言えばグルーヴィでアッパーな『Y』だが、歌詞を読み込んでいくと、そこに描かれている心情は必ずしもポジティブなものではないことがわかる。むしろ、いかんともしがたい現実に向き合いながら、それを振り切っていくためにパーティをぶち上げている。そんな感じがするのだ。
たとえば電車に揺られながら〈愛したい未来がない僕らどうして生きていく?〉と歌う「METRO」然り、〈忘れるくらいにハイになって眠りたい〉がためにウーロンハイで乾杯する「Oolong」然り。〈我らsilly 我らsilly/常に今日踏み鳴らしてdance on boogie〉と歌う「COSMIC JAM」にも、〈胃薬とコーヒーと それだけが譲れないなんて〉というフレーズに切実な大人の事情が滲む「OYKOT」にも、踊って騒がなければやってられないくらいの現実が顔を覗かせている。「滞納」なんて曲名からしてそうだろう。さまざまな状況と気持ちを抱えながら生きていく毎日のなかで、ある瞬間には自問自答し、ある瞬間にはすべてを吹き飛ばすように馬鹿騒ぎする。その2つの側面が『X』と『Y』であるとするなら、それはいわばコインの表と裏。そして、そんな表も裏も抱えながら生きているのが人間である。つまり、『X』『Y』という2つのEPは、ジキルとハイドのような二面性というよりも、SHOHEIというひとりの人間の複雑さをわかりやすく示してみせたものなのだ。スタイルを切り分けたことで、むしろ人間性がくっきりと浮かび上がる――そういう意味でこの2作は、SUKEROQUEを理解する最良の“説明書”。「SUKEROQUEって何者?」という人はまず、『X』『Y』を聴くところから始めてほしい。
◾️リリース情報①
SUKEROQUE『X』
6月24日(水)リリース
配信:https://big-up.style/JwCID5GZDx
<収録曲>
M1 初恋って事にしてくれないか
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:伊藤立 (agehaspringsParty)、SHOHEI
M2 雪国
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:SHOHEI
M3 雨
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:伊藤立 (agehaspringsParty)、SHOHEI
M4 twilight dance
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:SHOHEI
M5 電話しようよ
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:SHOHEI
◾️リリース情報②
SUKEROQUE『Y』
7月22日(水)リリース
配信:https://big-up.style/nCdLGXI89m
<収録曲>
M1 METRO
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:SHOHEI、佐々木聡作
M2 滞納
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:SHOHEI
M3 Oolong
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:SHOHEI、佐々木聡作
M4 COSMIC JAM
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:SHOHEI
M5 OYKOT
作詞:SHOHEI 作曲:SHOHEI 編曲:SHOHEI